19話 星の涙

 そして時刻は夕暮れとなる。吹奏楽部や軽音部の発表が始まる時間だ。

「ふぁ〜…やっぱりすごいなぁ」
「本当に人出がすごいわよ。フィナーレ、って感じだし」

 これが終わったあとに、彼らはこの会場を驚かせようとしている。
 生徒会にはちゃんと知らせてあるし、問題は無い。あるとすれば、たった一つ。

「おい、佑志」
「んー…」
「佑志ってば!」

 ばしん、と背中を叩く。すると痛みで目が覚めたらしい。

「おお、どした千早」
「夢の世界へ旅立ちそうなお前が怖い」
「あーごめんごめん。今日家に帰ったらのお楽しみがものすっごい楽しみで仕様が無くてねぇ」
「お楽しみ…?」
「千早君、聞いちゃダメ」

 そう釘を刺す皐月に、千早は何となく察して視線をそらした。この大人はまた…、と呆れた。

『これにて、吹奏楽部の発表を終わります!』

 そのアナウンスに、Stellsの4人に緊張が走った。ステージの照明が落ちると辺りは日の光だけ。それでも、暗かった。
 終わりか、という声が増え、会場から離れていく足音が出始める。そう、丁度その時。沙那は、息を吸った。

『レディースアンドジェントルメン!』

 どこのバトルの始まりだ。なんて千早は心の中で呟く。それと同時、ステージに再度光が灯る。

『七夕祭、いかがでしたか?』

 沙那にほら、と急かされ、聖が困惑気味に言った。観客がようやっと気付き、声を上げる。Stellsだ、と。

『来ていただいた方へのサプライズ、というわけで』
『今宵、一曲ばかりですが披露させていただきたいと思います。ほれ、佑志』
『んだよ、バトンが乱暴だなおい。作詞、Hiziri、編曲Yu-Shi ≪shining rain≫』
『お聞き下さい』

 会場のざわつきが更に増した。彼らは今日、普段使用している楽器が手元に無いのだ。
 全て打ち込みなのか、と疑問すら浮かぶ。しかし、それは次の瞬間に砕かれた。

 一時の音階。重なり合った瞬間にそれは消え、タン、タン、と足音がした。同時、4つの声が重なったではないか。

+++

静かな夜に満天の星空を
僕は独り見上げていた
静寂の中で輝く星たちを見ていた

光りの雨が降り注ぎ
僕は願いを込めた
「いつも通りが続きますように」と…

 それはアカペラの歌だった。Stellsにはいままでにないもの。

静かな夜に漆黒の夜空を
僕は独り見上げていた
どこか遠くで打ち上げ花火が空を彩る

光の雨が降り注ぎ
僕は切なくなる
「一度咲いても散ってしまうのか」と…

光りの雨が降り注ぎ
僕は願いを込めた
「いつも通りが続きますように」と…

 その歌が終わった瞬間。そう、まさにその瞬間に、花火が打ちあがったのである。
 そんなことは聞いていない。そう思って千早が生徒会の居るほうを見ると、グッジョブ、と親指を立てていた。

 成る程、そういうことか。サプライズをした代わりにサプライズで返されてしまった。それもそれで、良い思い出。

2007/06/10,2011/03/24