16話 星に願いを込めて

「…ついに1週間切ったか」

 ぽつり、と千早が呟き、その言葉に沙那が笑う。短く溜息を吐き出して、千早は佑志へ問いかけた。

「…佑志、結局の所、音つけるのか?」
「いや、つけないことにした。聖の詩見たらこりゃアカペラのほうがよさそうだな、と」
「そっか」

 ふと、千早の顔が翳る。何かを考えている顔なのは確かだが、沙那には彼が疲れ果てているようにも見えた。

「…しかしまぁ、ひじりん遅いね」

 ぽつり、と佑志が呟いて、時計を見た。確かに集合する時間は過ぎている。

「…珍しいなぁ…。何かあったのかな?」
「かもしれないね…。迎えに行って来るよ」
「あぁ、行ってらっしゃい」

 佑志がスタジオルームを出て行って、車に乗り込む音がする。10分もすれば聖を連れて戻ってくるだろう。

「…ねぇ、千早」
「んー?」

 沙那に呼ばれて、千早は振り向く。そういえば今ここには沙那と自分しか居ない、とはたと気付いた。

「伶都くん、結局の所はどうだったの?」
「ドンピシャリ。ZIONのキーボーディストだとさ」
「…そっか…ミオさん、だっけ」

 ZIONのキーボーディストの名義は『ミオ』。どこからその名前が出てきたのかは知らないが、確かに伶都は『ミオ』という名前で活動している。

「…ZIONといえばあのリーダー…ササクラだっけ? 何か知らんが敵意を向けられてる気がする。いや、ミオ以外全員からと言っても過言ではないような」
「えー…それ気にしすぎなんじゃ…」

 苦笑気味の沙那に、同じく苦笑で返す。
 それとほぼ同時、扉が開く音がした。佑志が聖を連れて帰ってきたのだろう。

「みんな…本っ当ごめんっ!」
「いや、そんな謝らなくても大丈夫だから、ね!」
「えーっと、暑いからカキ氷作ってきます」
「ブルーハワイよろしくー」
「佑志はメロン、と…」
「ちょ、おま…! 今確実にブルーハワイって言ったから!」
「聖はー?」

 完全無視。華麗にスルーして聖に問う。それを見て沙那は苦く笑った。

「あ、苺」
「りよかい。沙那は…宇治金時だっけ」
「うん」
「よし、食べ終わったら練習始めだ」
『りょうかーい!』

 聖と沙那の声が合わさる。佑志はというと、スタジオルームの隅で『の』の字を床に書き綴っていたとか。

+++

静かな夜に満天の星空を
僕は独り見上げていた
静寂の中で輝く星たちを見ていた

光りの雨が降り注ぎ
僕は願いを込めた
「いつも通りが続きますように」と…

 織姫と彦星。1年に、一度しか出会うことが出来ないと言われ続けている。それはただの伝説ではあるが。 それでも、子供に教える『夢』としては充分。

静かな夜に漆黒の夜空を
僕は独り見上げていた
どこか遠くで打ち上げ花火が空を彩る

光の雨が降り注ぎ
僕は切なくなる
「一度咲いても散ってしまうのか」と…

光りの雨が降り注ぎ
僕は願いを込めた
「いつも通りが続きますように」と…

 星に願いを込めて、七夕という日に相応しい、希望の歌を奏でよう。

2007/05/16,2011/03/24