15話 真実探し

「…ZiON…か」

 ぽつり、と呟いた言葉にルーム長が反応した。

「何だよ、どうしたんだ?」

 反応したのは、伶都。ZiONのメンバーではないかと疑われている者。

「…なんかな、勝手に敵対心むき出しにされてて困ってるんだよ。俺別に何もしてねぇのに」
「そりゃ困ったことで。俺は業界のことは良く知らないからなぁ」
「俺だってそんなに知らねぇよ」

 季節が夏に代わり行く初夏。教室に入って来る風が涼しくて眠気を誘う。

「なぁー伶都ー」
「んー?」
「お前キーボードかピアノか弾けるかー?」
「何だよ唐突に?」

 それは普通の反応だろう。至って普通の。

「いや、実は……七夕祭でゲリラライブやるって佑志が言ってて」

 後半は伶都以外誰にも聞こえないようにして、語りかける。聞こえてしまったらゲリラライブの意味がない。

「うん、それで?」
「アカペラでやるつもりなんだけど、どうにもピアノが欲しいなぁーっていうことになってさ。ホラ、沙那も歌うからピアノ弾いてられないし」
「なーるほどねぇ…」
「あー困る…」

 遠まわしに聞いているが、ピアノが必要なのは事実である。沙那に伴奏と歌唱のどちらもをさせるわけにはいかない。

「良い宛ないか?」
「んー無いなぁ…」

 苦笑気味に答える伶都に、千早は一瞬黙り、ゆっくりと口を開けて聞いた。

「…お前キーボードもピアノも弾けるだろ」
「え?」
「…佑志が調べた。担任権限使ってやってると思うが」
「……そう…」

 伶都の顔が曇る。これは…もしかすると当たりかもしれない。もしかしたら、伶都はZiONのメンバーかもしれない。
 そんな千早の思いを読み取ったのか、怜都が苦笑しながら聞いてきた。

「…本題があるんだろ?」

 怜都が聞き返してくるということは、千早が何か聞きたいのを判っている。その答えが怜都にあることも判っている。

「…ZiONキーボーディスト」
「それが?」
「…この学校に居るっていう話」
「…それが、俺だと?」
「否定は出来なくない。軽音部以外で探ってずっと習ってるっていうことが判ったのはお前だけだったし」
「そうか…」

 答えを言おうとはしない怜都と、答えを聞きだそうとしても聞きだす勇気がない千早。その2人の間に、一時の沈黙が流れる。その沈黙が、千早にはどうにも苛立たしかった。

「…なぁ、千早」
「んだよ?」
「屋上、いかねぇ?」

 苦笑を帯びて言う伶都に、千早は短く了承の言葉を返した。

+++

「あーやっぱ屋上は暑いな」
「日陰に居れば涼しいだろ?」
「…それもそうか」

 そうして日陰に入り、千早は寝そべった。青く澄んだ空を見上げて、伶都に問う。

「実際の所はどうなんだよ?」
「…良く判ったな、千早」
「ドンピシャリ、か」

 伶都は、苦笑したまま肯定する。こうも簡単に答えが出たことに、千早は驚きを隠せずに居た。

「……バレるとは思ってなかったよ」
「俺だって驚いたんだぞ。ZiONのキーボーディストがうちの学校にいるーなんて話聞いて」
「…どこから漏れたんだろうな、それ」
「知るかよ」

 そう千早が答えて、5限目の予鈴が鳴る。千早は慌てて飛び起きた。

「次って確か…」
「リーディングじゃなかったっけ?」
「…それ昨日の日課。今日は古典だ」
「あはは…急がないと先生に怒られるなー」
「古典の先生は1秒でも遅れると遅刻扱いにするから急ぐぞ!」
「りょうかーい!」

 七夕祭まで、あと2週間。刻一刻と近付くその時期は、何かを与える日となる。

2007/05/10,2011/03/24