14話 夢で終わって欲しい

 辛うじて今日のミュージッククラフトは終了。
 皐月は、楽屋で収録前の出来事を振り返る。あんなことがあって歌えるのかどうか心配で仕方が無かった。なんとか歌いきって、SACRIFICEのデビューを飾ることは出来た。しかし―――…。

「………っ…あんなのって…ないよ…」

 それはほんの数時間前。楽屋に居たときのこと―――…。

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「ねぇ、佑志、覚えてる?」
「何が?」
「昔…私達が、まだ中学生だった頃」
「随分昔の話をするんだな」
「そうだね…」

 そう、ふと私が思い出した昔の話が、発端だった。

「私が、九州に引っ越す前日…」
「あぁ…お前が去り際に妙なことを口走ったあの日か」
「妙って言わないでよ。あれは列記とした告白でしょ」
「一般的にはそうだろうな」

 中学となればもう10年以上前の話だ。

『佑志…あのね…』
『何だよ、皐月』
『…私』

 ―――佑志のこと、好きだったよ。

 その言葉に心底驚いたものだ。懐かしいとも思うし、若かったとも思う。
 でも、今はもう30代間近…27だ。

「…じゃあ、今は?」
「え……?」
「今は、どうなんだよ?」

 つ、と佑志の指が皐月の唇をなぞる。恥ずかしさの余り皐月はきゅっと目を閉じた。その直後、ダンッ、と皐月の後ろの壁に佑志が手を衝いたのが判る。
 その音にビックリして目を開けるとその距離僅か10センチ。そこに佑志の顔があった。

「……10年前から引きずってるとか…、言うんじゃねぇぞ」
「…………っ…」
「……言ったら…どうなっても知らねぇ」
「…もし、言ったら…どうなる、の…」

 声が震える。怖いのと緊張しているのと、混ざって。

「………、こうなる」

 そう短く一言呟いて、佑志は皐月の口を塞いだ。

「………っ…!」
「……次は、こんなもんじゃ済まないからな」

+++

 まるで、あの時の感覚が戻ってくる気がした。なんで、彼はあんなことをしたのだろうか。佑志は距離を置きたいのか、それとも…。

「……私が…距離を縮めたいの…?」

 昔、彼のことがとても好きだった。それを諦めていたはずだったのに、キスをされて嫌ではなくて、寧ろ嬉しくて。でも、何故佑志がこんな事をするのか考えられなくて。

「…余計…好きになっちゃうよ…」

 どうしてくれるのか。何がしたいのか。何を求めているのだろうか。
 何もかもが判らない。

2007/04/11,2011/03/24