男女はそれぞれ舌打ちをして、残り少ない体力で全力疾走。
その場から立ち去った。






ロザ・パリエ 4








「…懐かしいね、アーティス。
 元気にしてた?」

にこやかに話しかけるのは―――、

「ね、姉さん…!
 え、あ、あれ…!? 大丈夫なの?!」

姉、リメレア・ロスアンジェ。

「大丈夫…って何が?」
「姉さんの体!!」
「あぁ、別に」
「別にじゃないよ…!!!」

人々のざわめく声がより一層大きくなる。

「…って…なんで街中で襲われ…。
 …! ちょ、姉さんどういうこと!?
 街中でなんで召喚魔法使ってるの…?!」
「これだけ留守にしてれば町も変わる」
「…え…?」
「今は、とりあえず友好だよ。
 スラムを除いて、だがな」

それを、姉は…リメレアは、やったというのか。

「余り変わってない様に見えるが…ん、身長が伸びたかな」
「いや、それは別に…。
 そうじゃなくてそれよりも…!」
「―――?」
「こ、ここじゃ話できないから家いこ、家!!」
「あ、あぁ…」

アーティスに急かされてリメレアは連行される。
彼女達が居なくなって、人ごみは以前のものに戻っていった。

―――ただ1人を、除いては。

「…なるほど、希望の子があの子だったのか…」

それは、オパスで…アーティスを助けた男。

「…力がありそうだとは思ったけど、まさかロスアンジェの血を引いてるとはね…。
 これならオプリュストのあいつと一緒に居たのも頷けるな…」

男は、笑った。

「…楽しみがいがありそうだ…。
 あいつ、どんな顔するかな…」

くっと喉で笑って、男は姿を人ごみに眩ました。




「で、話ってのは?」

育ったその家。
元より名家だったために家は大きい。

「…人工魔石を作ったのが…、オプリュストだった」
「…見つけてきたんだね…その答え」
「うん…、意外な人から聞いたんだけどね」
「意外な人?」
「…リィア=エルティーニ」
「んだって…!?」

リメレアの顔が驚きに変わりそれから顔をゆがめる。

「なんであの女が知って…ちくしょ、知識の塊だなあいつ…」
「…姉さん、現状どれくらいまで知ってる?」
「…エルティーニがのっとられた、オプリュストが富豪にとられた、オパスが襲撃にあった。
 それぐらいだな」
「…ここまでその情報回ってきてるんだ…」
「ここを通る旅人も少なくは無いからな…」

そう呟いて、リメレアは目を伏せる。

「オプリュスト…か」
「…旅先で会って一緒に旅してたのがオプリュストの…跡取りだった」
「―――!
 本当か!?」
「シェイカ・オプリュスト。
 無族の中でもかなり強力だって囁かれてる男」
「…そ、うか…」

驚いて椅子から立ち上がってしまったリメレアは再度椅子に座りなおす。

「…突然姿消したら探しに来ると思うんだけどね…。
 かなり長い間一緒に旅してたし」
「つまり、いずれはロザに来る、ということか」
「うん、そうなる。
 …出来れば、ロザに入れないで欲しいんだけどね…」

溜息を吐き出して、布を剥ぎ、ローブを取る。
―――彼女の胸には、黄金の十字架があった。

「…殺したくなる、か?」

ふとその十字架を見て口元だけ笑うとリメレアは言った。

「…彼の隣に居るのが辛いのよ。
 憎むべき対象は確かにオプリュストだけど、彼はそれに直接関与しているわけじゃないし。
 …スラムがオプリュストの出身地だということは本人も知らなかったみたいだからロザだとは思わないだろうげど」
「…人間である以上は考えるさ…。
 いくら世界樹の使い魔のようなものでも人間として生きている。
 意思もある。
 …仕方の無いことだよ…」
「…いずれは、どうにかしなきゃいけないんだしね…」

そのときのアーティスの顔が、リメレアには見たことが無い苦しそうな顔だった。






2006/02/25