「…リメレア…」
「…何だ、サタン」
「…懐かしい者が、来る」
「…懐かしい、者?」
「お前にとっても」

そう言われて、シスターの衣装に身を包んだ女性は溜息を吐き出す。

「…アーティス、か?」
「…あぁ」

リメレア・ロスアンジェ。
ロスアンジェの現当主。

そして、人工魔石に侵されている者。

「…一体、何をしに来るのやら…。
 まぁ、いい。
 迎えに行こうか」

そう言って、ふっと空を仰いだ。






ロザ・パリエ 3







「…懐かしい、な」

人ごみの中。
少女は布を被っていた。

その格好は珍しいものではなかった。

「…ロザ・パリエ…」

少女の生まれ育った町。
そして。

「…スラムのある町…」

人工魔石の生まれた、スラムのある町。
オプリュストの生まれた町。

「…同じ町から…現在の名家が2つ、か」

偶然か必然か。
2つの名家はこのロザ・パリエから生まれた。

「…姉さん…まだあのお墓にいるのかな…
 ―――!」

少女は、ふと視線を鋭くする。
人々が行き来する中―――その中で少女は気付いた。

「…居る」

ぽつりと呟いて、少女は駆け出す。
まるで、その人ごみから逃げるように。

「…ちっ…気付きやがったかあの女…!!!」
「あんなに魔力を持ってるのは珍しいっス…捕まえるっス…。
 売り飛ばして金にするっス…」
「追いな!!!」
「「了解!!」」

少女が逃げ出したのを、少女を見張るかのように見ていた5人組が動く。

「…厄介ね…」
(よりによって街中で…。
 …装備式の人工魔石を持ってるわね…)

まったくもって困る力だとおもう。
人工魔石があると否応なく少女の持つ魔石が反応する。
胸が締め付けられるように苦しくなる、厄介な能力だ。

「…はぁっ…はぁっ…!!!
 …まだ追ってくるし…!!!」

この街中で魔力を使うわけにも行かない。
かといって剣を振り回すのも…。

そうあれこれ考えていると忍者のように動く女と程よく鍛錬された男が少女の前後に回りこむ。

(…面倒な…)

布を被っていて少女の表情は判らない。

(しかもアレ…スラムの奴ら…)

魔法使いの売買までやってるのか。
そうでもしないと生きる金が手に入らないのか?

(…迷ってる暇も無さそう…。
 …仕方ないか…)

少女がはぁ、と軽く溜息を吐いたと同時、前後から少女に男女は襲い掛かる。
男女が少女に攻撃を仕掛ける直前、少女は跳んだ。

ふわり、と少女の被っている布が風に煽られる。

「…誓約発動」

見下した顔で、少女は呟く。

「召喚・グ「召喚フォカロル!!!」
「―――…!!」

少女が召喚しようとしてそれを遮るようにもう1人、少女にとっては聞き覚えのある声がした。
突風が吹き、男女を囲むように水の柱が現れ、そして渦を巻き男女を地に叩き付けたそのフォカロルという者。
それには、少女は見覚えがなかった。

「…まったく…また人身売買か?」

その声に町は騒然とする。
その声の主が通ろうとする人ごみが一瞬にして割れた。

「…私の妹に何か用か、お前たち」
「な…、妹だと…!?」

忍者のような女が言う。

「…まぁ、随分前にロザから居なくなっていたからな…判らなくも無いだろう。
 …フォカロス、戻れ」
『御意』

その声の主は修道女だった。
その姿を見て、少女は呆然とした。

「…そこの子は、アーティス。
 ロザの希望だ」

女が言うと人々の視線が少女…そう、アーティスへ向けられた。










2006/02/25