ロザ・パリエ 2







「…ファシエのこと、でしょ…」
「…」
「…突然、目眩がして、意識が遠のいた。
 ふと見たら…、ファシエが笑いながら私を見下してた」
「…それから、お前の魔力を盗った…んだな…」
「多分。
 今もまだ体重いし…復活するにはあと数週間かかるかもしれない。
 …けど、数週間なんて…」
「…?」
「ううん、何でもない。
 気にしないで」

はにかんで笑って見せると本当に大丈夫なのかとシェイカは問う。
大丈夫と言っても、彼は納得してくれない。

「…ホント、大丈夫だから」
「…無理、するなよ」
「シェイカこそね?」

その言葉に、シェイカは返しようも無かった。
シェイカが部屋を出るのを確認して、アーティスは起き上がる。

「…数週間も待ってるなんて惜しいことこの上ない…」

いつもの服に着替えようとして、動きを止めた。
左胸の上…鎖骨の下辺り。
そこに、生まれた当初は無かったそれを見て。

「…色が…消えてる…?」

それは、アーティスが人工魔石を作った者を恨む原因となったもの。
―――人工魔石そのもの。

実験台にされたロスアンジェの子供2人が唯一所持する魔力の塊。
体に埋め込むことで通常の魔石よりも更に能力が高く発揮される、石。

「…シェイカは…コレには直接関係なんて無い…」

けれど。

「…作ったのは、オプリュストの名を持つ研究者よ…」

恨むべき対象は、オプリュスト。

「…シェイカと共に居るべきじゃ、無いのよね…」

この恨みは一方的に関係の無い者へ向けている。
ただ同じ血を引くからと。

それは、判っている。
それでも、どうしても許せないのだ。

「…姉さんと私の人生を狂わせた元…」

聖職者の力が黒く変わった原因。
それが、人工魔石。

埋め込まれたことによって魔力の流れが逆転し、聖魔術が扱えなくなった。
そして、聖職者としての職を失わざるを得なかったのだ。

「…ファシエ…」

彼は、アーティスの魔力を吸い取った。
だが…。

「貴方は何がしたいの…?」

私を助けるようなことをして。
魔石に溜まった捨てるべき捨てられぬ危険な魔力を吸い取って。

「…貴方が私を求めたって…私は…リヴァにさえ、答えることは出来ないのよ…」

リヴァイアサンに提示された守護条件。
それすらも、彼女は守ることが出来ない。

人工魔石で植物状態とほぼ同じ状態になってしまっているから。
世界樹の―――、

「…世界樹の…使い魔のようなものなのにね…」

自分や姉・リメレアを通して世界樹は世界を見ている。

「…いずれ…」

世界樹と同化してしまう。

「…魔石ごと…世界樹の生きる糧となるんだもの」

―――誰も、それを望まなくても。

着替え終わってふと目に付いたのは水の入ったコップと薬。

「…シェイカ…」

彼も彼なりに気にしているのだろう。
自分がアーティスの人生を狂わせた者の血を引く者だと。

「…ありがとう…。
 …ごめん、ね…」

そして。

「―――…さようなら」

彼女は、窓から飛び降り―――姿を、空に溶かした。









2006/02/23