「…生きてるか」
「…勝手に、殺さないでよ」

意識を取り戻した少女は、苦く笑って見せた。





ロザ・パリエ 1







「…」

ひと時の強い風が、女の髪を攫った。

「…アーティス…」

ぽつり、とそう呟く声も、風に攫われた。
その声が聞こえていたその男は、彼女に聞こえるように呟く。

「…やはり、心配なのか?」
「…あいつは…私のたった一人の身内だ」

きゅっと、女は胸元の十字架を握り締める。

「…生きていてくれ…」

―――私の、そして…彼らのために。

「…っ…!?」

立ち上がると一瞬の立ちくらみを覚える。
女はまた草原に座り込んだ。

「無理は、するな」
「…もう、十分に無理はしてる。
 あんたがこの時間軸、私と共に生きている時点で無理を超えた無理だ」
「ありえない言葉を使うんじゃない。
 そのような言葉遣いが聖職者に許されるのか?」
「もう、聖職者など居やしない。
 私であろうと、アーティスであろうと…。
 既にロスアンジェは廃れたのだから」

そして、

「…何故、私ではなくあの子が選ばれてしまったのだろうね」
「それは、俺にも判らん」
「…『エリシウス』の跡継ぎなど…あの子にそれをさせるなんて…。
 あの子は…そうしたら」
「…その為かも知れない」
「…何、が…?」
「アーティスが、旅に出たのは」
「…旅…か」

今。
アーティスは何処で何してる?

そう青空に聞いても答えなど返ってくるはずがない。

「…『ローズ』が揃えば、『エリシウス』だけではない他の魔石も―――」
「だが…っそれはあの子にとって…!!!」
「…彼女は、もうわかっているんだろう?」
「…っ…」

そうだ。
確かに2年前、彼女はこの場所に来て言った。

『あの魔石の跡継ぎになって、この世界を救って見せるから』

と。
確かにそう言った。

「…諦めるんだ、リメレア」

男は、女―――リメレアと呼ばれたその女を諭すように言った。

「…アーティスは、もう決めている」

全ての運命を、受け入れると。










2005/12/08
2008/04/27 加筆修正