「私は、フィエリとはじめてあった時、自分の家柄の事も全然知らない子供だった」
「…お前の…姉さんが…?」
「…だって…、2人とも婚約してたんだもん…」
「…!」

だからこそ。
名家に悪魔の子を迎え入れること、交流を持つこと、それらの面で世間的に良いとは思われていなくて。

「だから、お姉ちゃんやロスアンジェが悪く言われるのなら死ぬって、そう…言ってた」
「…で、そのフィエリは?」

今生きているのか?
そう問う。
するとアーティスは首を横に振った。






聖職者 2









「ファシエを封印するときに、お姉ちゃんの代わりに…」
「…殺された…?」
「半分正解半分間違い。
 お姉ちゃんは、ファシエを喚起するときに魔力の大半を使用してしまって、封印術を施すだけの魔力が残っていなかった。
 そこで、フィエリは思いついたの。
 同じ血を引く私なら封印できるだろうって。
 けど…私は当時、魔法なんて全然使ったことが無くて…。
 だからフィエリは私とお姉ちゃんを守りながら私に封印術を教えてくれた。
 私が封印を終えるまでずっとサポートしてくれた」
「…そして、今は亡き人、ということか…」

悪魔の子だろうが、誰だろうが。
良い心を持つ者は、種族が何であれ優しい。

「…ロスアンジェが元は聖魔法を使う聖職者と呼ばれていたのに対し、現在黒魔法を使う聖職者と言われる理由が、それなのか…」
「…そうなります。
 フィエリと交流を持ち始めたときからそういわれてますから」
「悪魔の子と交流をするなんてこと、黒魔術師でもなきゃできねぇと思われていたからか…」
「実際、どんな人間でも悪魔と会うことは出来ます。
 それに気付かないだけで。
 黒魔術師は悪魔と契約してますから…実際こうして身近に存在があるんですけど」

誰でも、何かのきっかけで悪魔と会う事がある。
それが、小さいことだから気付かないだけで。

それなのに、悪魔と交流を持つ者は異端者だとそういわれて。

「…ロスアンジェは、そうして廃れたんです」

今現在、2名のみを残して。

「…相変わらず…お姉ちゃんは墓の前でだんまりです」
「…フィエリとやらの?」
「…はい。
 いつ私が行ってもずっとお墓の前でじっとしていて。
 それを、影からサタンが見て、何かあれば守っている…そんな状況です」

契約『守護』。
代償…、

「…己の命を代償にして…」
「寿命が縮む…ってこと?」

舞夜の問いにアーティスはうなづき、言う。

「サタンは姿を封印されています。
 それは、お姉ちゃんの命を少しでも長く持たせるため。
 サタンが真の姿になれば、姿封印状態の5倍の命が減ります」
「…それでも尚、お前の姉は契約を執行しているのか」
「…はい」

何故なのかは知らない。
だが、契約が6年…フィエリが死してから現在までで6年。
その間、彼女の命がどれだけ削られているのかなんて、判らない。

「……もう、2年会ってませんが…多分、今も同じでしょう」

あの墓の前で…彼女は。
あの時と変わらず、願っているのだろうか。

「…ロスアンジェの廃れ話、それからリヴァの話はここまでです」

もう、これ以上話しても、それは本当に言ってはいけないものしか、ない。

「何にせよ、これで3家揃ったんだ。
 詳しい話はヴェレット・レザで話そうや」

ぽん、とシェイカを逃がさないように肩を掴みにっこり笑うブレウス。

「アーティス…お前如何するんだ?」
「…とりあえず一通り話は聞くよ。
 私に何か出来るかどうか、それはわからないけど」

できることがあるのなら、やりたいから。









2005/10/29