「何故解いてくれんのだ…」
「暴れるから」

すぱっと。
すっぱりと言い切った。






聖職者 1







「…リヴァ、と私は呼んでますが、フルネームはリヴァイアサン。
 リヴァイアサン・R(ローラ)・アクエディエル」
「…リヴァイアサン…?」

聞き覚えがあるのか、ブレウスが首をかしげる。

「7大悪魔のリヴァイアサン。
 別称でレヴィアタン、レビヤタンとも言われてますね。
 7つの大罪で嫉妬(エンヴィー)を司る悪魔です」
「…どーりで嫉妬深いってコトか」

睨みつつも攻撃をするつもりは無いらしい。
シェイカは己の手の中にある宝珠に視線を落とす。

「…あの…、ファシエの話、なんですが…」
「…魔王ファシエの…?」
「はい。
 『ファシエ』という名は実は通り名で、本名ではありません。
 過去、『アルクサウス』という元より悪魔として生まれた存在が地上で生きていたという話もありますが、その『アルクサウス』も通り名です」
「私がレビヤタンなどと呼ばれるのとは別なのだ。
 私自身の名前でアクエディエルというのがあるが、苗字が通り名として使われることが多い」

リヴァイアサンの説明に、なるほどとうなづく。

「…ファシエの本当の名前は…、ルシフェル・W(ウェデリア)・ファシエール。
 …最高の悪魔にして最高の天使であり、ルシファーとも言われます」
「…ルシファー…か」

最高位の悪魔。
かつての大天使長。
そして、明けの明星の意味を持っていたその名前。

「…サタンとも同一視されがちなんですけどね…」
「同一じゃない、ということか?」
「えぇ。
 姉の契約悪魔がサタンですから。
 ルシフェル…ファシエは、姉が契約をしようとして呼んだのですが…」
「…契約に、失敗した?」

その言葉に、こくり、とうなづく。

「そのせいで、呼び出されたのをいいことに人間界で行動をしているんです。
 そして…過去にそのファシエを封印したのは…」
「アーティスだ」

答えたのは、リヴァイアサン。
そして、続ける。

「封印が解けたときにアイツに始めて遭遇したのも…「リヴァ!!!」
「アーティスだ」

リヴァイアサンは、遮られても尚言った。

「…本当…なのか?」

声は、シェイカから上がった。

「お前が、封印して、そして…もう一度遭遇したというのは…」
「…確かに、事実ではある。
 けど、封印できたのは私だけの力じゃない…。
 フィエリの力があったから…!」

その名を口にして、アーティスは止まった。
まるで言ってはいけない言葉を口にしたかのように…。

「…フィエリ?」
「…」

アーティスは、答えなかった。
答えてしまえば、彼らとともには居られないのではないかと思う。

なぜならフィエリは―――…。

「…このことを、言っていいのかわからない…。
 言っても、それでも私がここに居られるなら…言います」

彼の、存在を。
力を。

「何があっても、逃げるなんてしねぇから大丈夫さ」
「私にこっちの世界の事情は良く判んないけど…。
 そこまで考え込まなくてもいいと思うわよ?」
「直ぐにアーティスを嫌いになれといわれてもなぁ…無理だろ」

そういう答えを出した3人に、アーティスはいつになく真面目に、言った。

「彼、フィエリは…悪魔と人間の間に生まれた異端児で、世間一般でも嫌われる悪魔の子。
 悪魔の子と交流を持った人間は、悪魔に取り付かれたと言われて人に嫌われ続け…。
 それが、私たちロスアンジェ消滅の道でもあるんです…」
「フィエリと交流をもったがため、か」
「はい…。
 彼自身は本当に死のうと思ったそうです。
 …自分のせいで名家が潰れるなんて、って」
「けど、それをお前は許さなかった」

そうシェイカにいわれて首を横に振った。

「…お姉ちゃんが許さなかった」

そう。
リメレア・ロスアンジェ。
彼女の姉が。









2005/10/28