淡い蒼の光。

その柱が、アーティスの周りから消えた途端。
シェイカの手には蒼い、宝珠があった。
そして、アーティスは―――。






行き先 7







「…よかった、出来たね」
「…!
 アーティス!!!」

ぐらり、と。
よろけるアーティスにシェイカが近寄ろうとしたその瞬間。

そこに、見たことの無い姿が一つ。
それは確かに男の後姿。
青みがかかった銀髪…例えるのなら雲のような、そんな色合いだった。

「…アーティス」

シェイカも、ブレウスも、舞夜も。
彼らは動きを止めた。
いや…その存在の大きさに、動くことが出来なかった。
魔術師、魔法使いの魔力の比ではない。
なんだ、この魔力はと問わずには居られなかった。

名を呼ばれた本人は、自分を支えたその存在に懐かしそうに声をかける。
その反面、口は歪む。

「…なんであんた居るの…」

その声に、にこり、とそれは口元だけ笑った。

「…主に危険があれば現れる、と契約時に言った筈だが?」
「…そんなこと言ったっけ…」

視線をそらして、それから言う。

「…周りの人に…何も、しないでね…」
「嫌だね」

言葉にすぱっと答え、アーティスの顔が青ざめる。

「なんと言っても…ダ・メ・で・す」
「嫌だ」
「ダメ」
「…。
 …わかったよ」

仕方無さそうに、それは言う。

「…誰も悪くないから…。
 私が勝手にやったことだから私自身が悪いから」
「そうやって…自分を責めるな」

その2人のやり取りに、固まっていた3人ははっと我に返る。

「アーティス大丈夫か?!」
「あ、シェイカ…私は大丈「貴様、誰だ」

アーティスの言葉をかき消すように、その男は一歩前に出る。

「…お前こそ誰だよ」
「下等な人間が何をほざく」
「なっ…?!」

あぁ、2人ともやめてください…。
そういうアーティスの言葉も聞こえていないようだった。

両者沸騰しやすいのだろうか…。
一気に周りの魔力が強くなっている気がする。

魔力が集まっている?
ふと考えて、アーティスは先ほどの術で疲れている体に鞭を叩く。

「…ふ、2人ともやめなさい!!!」

2人の間にアーティスが割ってはいる。

「出会い頭に喧嘩して如何するのよ!!!」
「何かムカつくから」
「下等な人間は嫌いだ」
「あぁああもう…!!!」

2人してこれからおっぱじめる気だ。

シェイカは彼よりも止まり易い。
それは判っている。
それならば。

「やめろといってるのが判らないのかあんたはぁああああああああああ!!!!」

直後、爆発が轟く。
それに全員が驚くと、その男の周りに魔方陣が浮かんでいる。

「…ぁ…は…ったく…手間のかかる…」

流石に限界らしく、突っ伏すアーティス。
そして、その男。

「…アーティス!
 ここから出せ!」
「い・や・で・す!!!」

即答。
ブレウスが目を丸くしてそれを見る。

「…その魔方陣…、使えるということはかなり高等な黒魔術師なのか…」

ぽつり、と呟いて、舞夜が首をかしげる。

「ブレウス…知ってたの?」
「一応は、な…。
 俺に黒魔術は使えんが…。
 …となると、あの男がアーティスの契約悪魔か…」

実際、高等悪魔を見ることは珍しいのかブレウスが興味津々としている。
それに舞夜は呆れて、アーティスに駆け寄る。

「アーティス、大丈夫?」
「あ…はい…何とか…」

こうなった以上は説明するべきなのだろうか。
シェイカも未だ憤慨しているらしく、それをブレウスが力でねじ伏せようとしている。

「…とりあえず…説明するべきですか?」
「…そうね…」

そうなるのか…と溜息を吐き出す。

「……リヴァ…暴れないって約束する?」
「代償によっては?」

リヴァ。
そう呼ばれた男の悪魔らしい返答に更に溜息を吐く。

「…このまま魔方陣の中にぶちこんでおきましょう」
「いやいやいやいや代償ナシでいいですからこっから早く出せ」

悪魔がコレでよいのか。
そう思わせるアーティスとリヴァにブレウスと舞夜が溜息を吐く。
そして、アーティスは魔方陣を解いた。

「…暴れだしたら即送還」
「…判ってるから…魔力で腕を絞めんな…」

アーティス本人の手は宙ぶらりん。
だがリヴァは魔力で腕を絞められている。

「…リヴァに自己紹介させると凄いことになりかねないから私が簡潔にお話しますね」

にこ、とアーティスが笑った。







2005/10/26