行き先 3










「…支配者・セルヴェードと聖職者・ロスアンジェ…か」

ぽつりとつぶやくシェイカにアーティスはただ黙っていることしか出来なかった。

「…どちらも、姿は見えない。
 もうだいぶ昔から、割れてしまったからな…」
「…レーティの時代から割れ始めたんだっけ?」

ブレウスに問う舞夜にお前と言うヤツは、とぺちんと頭を叩く。

「…お前の責任になるぞ」
「…嫌よ、それ」

そんな夫婦をよそに、シェイカが考える。

「…そうだとすると、接触を持たないとどうこう言えないな…」
「…それが出来てたら、ブレウスさんたち来ないんじゃ?」
「…だよなぁ」
「でしょ?」

接触できていたならこうしてわざわざこんな所にこんなことを言いに来るはずも無いし。

「…で、だシェイカ」

唐突に話を振られてシェイカがびくっと動く。

「…その2つの一族を探すために力を貸してほしい」
「…は?」

とぼけた返事にブレウスが沸騰しそうになるのを舞夜が抑える。
そしてその言葉がようやく脳に達したらしいシェイカは唖然として尋ねる。

「…力を貸して欲しいって」
「…今のエルティーニは権力がまったくって程にない。
 そりゃ、俺ら兄弟しか生きてないからってのもあるけどな。
 だから、4大一族の1つ、オプリュストのお前に力を借りるためにここへ来たんだ」

そういうブレウスに、シェイカは即答した。

「嫌だね」

と。

「なっ…?!」
「…俺は別の目的がある。
 だから、利害不一致で俺が協力する必要も無い。
 …第一、探すための情報が一切存在しないと言うのに探そうと思う方が馬鹿げてる」

そういうと、シェイカはアーティスの隣をすっと抜けるように消えていった。

「…ちっ…あんのガキ…」
「ブレウス、あんたの言い方も悪いんじゃないの?
 ちゃんと言わないから」
「そりゃ姉貴たちのこと言わなきゃならんだろうけどよ…!!!」

また喧嘩に発展しそうな会話に、アーティスが割ってはいる。

「…ブレウスさん、舞夜さん」
「…え、と…、アーティスちゃんだっけ?」
「呼び捨てで構いません。
 …詳しく、教えてもらえませんか?
 私から、シェイカに話しておきますから…」

ブレウスと舞夜は、顔を見合わせた。







「…ってわけで、姉貴たちがヴェレット・レザで探してるんだ」
「…あの知識の町と呼ばれる…ヴェレット・レザ…ですか?」
「あぁ。
 そんで、力が必要だからって俺と舞夜にオパスに行けと」
「…シェイカの協力を得るため…ですね。
 でも何故そんな情報が…」
「姉貴…魔道具使って調べるの早ぇんだよ…。
 探すのは姉貴の専門分野なんだが、それでもセルヴェードとロスアンジェが発見できないから、って」
「…無理な場合は、私たちで探すから仕方ないんだけど」
「…そうですか」
「…セルヴェード現当主…ってキエラだったかな…曖昧だ…。
 ロスアンジェ…はわからねぇや。
 ずっと当主の名を聞いてないからな…情報も無いし」
「…そうですね」

アーティスはそう返すしか出来なかった。
自分がロスアンジェの生き残りで、姉が現在、当主といわれる立場であるということをいえないから。

「それで…姉貴でもわからねぇから、ってあのガキにわざわざ会いに来てやったんだがなまったく」
「シェイカくんのことはもう置いといて!
 それよりも今は時間が無いんだから」
「…そうだな…。
 だから、どうしてもあいつの力が必要でオパスに来たんだ…。
 断られるとは思ってたけど、あんなあっさりと断るなんて思いもしなかった」

やれやれだ、と肩をすくめるブレウス。
それを見て、アーティスは呟く。

「…シェイカも…焦ってるのかも知れません」
「あぁ?」
「ブレウス…あんた相変わらず口が悪い…」
「…この前…悪魔…いえ、魔王ファシエが私たちの前に現れたんです」
「ファシエだと!?」

驚きの声を上げるブレウスに判らないという顔をする舞夜。

「…はい」
「あの悪魔…確か昔にロスアンジェの誰かが封印したって聞いてるんだが…。
 まだ生きて…?」
「…4年前、復活した、といわれてます」

4年前のあの日。
復活したファシエに一番初めに遭遇したのは…自分だ。
だから、判る。

ブレウスが訝しげにアーティスを見る。

「……―――あんた…アーティスだっけ。
 そこまで知ってるたぁ普通の人間じゃねぇな?」
「…それは…今すぐにはいえません…」
「…『普通』じゃないことは確かか」
「そうですね…そうなると思います」

ロスアンジェの姓を隠れながらにも持っているのだから。
その時点で、既に普通の人間ではない。

「…ファシエは…この世界を支配しようとしているのかもしれないんです。
 だから…4大一族を潰しにかかってるんだと思います」
「…根源は…ファシエ、なのか…。
 あぁ、舞夜、ファシエってのはこの世界に幾度と無く現れてる魔王のことでな」

ブレウスが舞夜に説明している間、アーティスはその場をそっと離れた。












2005/09/25