魔術都市の騒乱 5





現在、オパスに向けてキーゼで飛行中です。

「…うわー、高いー」
「あんまり身を乗り出すと落ちるぞ。
 いくら俺でも落ちたら助けられないからな」
「ぶー、判ってますー」

ほんの数分前のあの出来事が、既に何日も前かのように2人は普通に会話をしていた。

(…それだけ、お二方とも暗黙の世界があるということですか)

他人には言うことの出来ないことを隠しているからこそ、それに触れないで会話を進めることが出来る。
それが、彼らの共通点。

隠し事が、あるからこそ。

(到底、私には無理な話です)

隠すことが、何もないから。
だから、触れてはいけないことにも触れてしまうそうになる。

「おー、オパス見えてきたぜー」

シェイカの声に、ウィーノは顔を上げた。
見慣れたはずの、その町は、いつもと違って、格段に美しく見えた。






「…っと」

シェイカはキーゼから飛び降りると、たぶんというか絶対貴族とかが一杯いそうなっていうかもうむしろここは貴族の領域でなく王族の領域ではないかと思われる庭に足をつけたのである。

無論、何者だ!と兵たちが姿を現すのだが。

「はいはい皆さんお久しぶりの方はお久しぶり。
 はじめましては初めまして。
 ジエヴィアのシェイカです」

にっこりとシェイカが言うと、シェイカを知る兵たちは武器の構えを解き、慌てて一礼した。

「ウィーノです。
 お久しぶりです、皆さん」

シェイカに続いて彼も言う。
アーティスは訳がわからずちんぷんかんぷんしていたが、やがて、兵士たちが「王!」と呼ぶ声がした。

「何事かね」

そういって姿を現した王に、シェイカとウィーノが一礼するのを見てアーティスも慌てて一礼した。

「お久しぶりです、ユーラさん」

そのシェイカの声に、ユーラと呼ばれた王は、目を丸くした。

「おぉ、シェイカ…!
 久しいことだ…何年ぶりになる?」
「5年も前のことになりますか」
「もう5年か…早いものだ。
 その間にウィーノもシェイカも成長したようだな」

はっはっは、と笑う王に、アーティスはやはりどうしていいかわからない。

「…ん?
 こちらのお嬢さんはどなたかね?」

ふと、王に問われたのでアーティスは慌てて言った。

「アーティスです。
 ちょっとした…えと、その、目的でシェイカと一緒に旅をしてます」
「そう固まらなくていい。
 王といえど、昔の名残で王と呼ばれているだけだ。
 今のこの世に王などいない。
 私は、昔国と呼ばれていたこのオパスの管理人だ」
「い、いや、でもですね…」
「そーだぞアーティス。
 いやに緊張したらお前また倒れるんじゃないか?」
「よ、余計なお世話よっ!」
「シェイカ様は緊張感がなさ過ぎなんです」

ウィーノに言われてシェイカはえーと子供のように文句を言う。

「まぁ、シェイカは一番私とかかわりがあるのだから気にするな、ウィーノ。
 …それで、ジエヴィアがのっとられたというのは…」
「はい、本当です。
 どうにか私はこうしてここにいますが、シェイカ様のご家族は…もう」
「…そうか。
 まぁ、久しぶりに来たのだ。
 ゆっくりしていけ」
「お言葉に甘えさせていただきます」

ウィーノの声に、アーティスもぺこりと礼をしてそれからユーラに促されて城の中へと足を踏み込んだ。








2005/06/08
2007/08/23 加筆修正