魔術都市の騒乱 2






道中。
多分、ジエヴィアに向かってる。


「…はー、でもシェイカ様が女性に手出ししないなんて珍しい…」
「…なんだよ。
 だから女好きじゃないっていってんだろ」
「いやーびっくりしたなぁ…。
 シェイカ女好きだったのかー…」
「お前もしつこい!」

ばこっと毎度お馴染みワールドマップ丸めた筒殴り。

いつもの服装になり、道なき道を進む進む…。

「なぁ、ウィーノ」
「なんですか、シェイカ様?」
「…いつも通ってる道じゃないが…。
 何かあったのか?」

そのシェイカの問いにさすがと思ったウィーノは足を止めて言う。

「…。
 そろそろお昼時です。
 そちらの川岸でお話いたします」




とりあえずご飯。
魚を捕らえて果実を採取して。
焼く切る煮るその他諸々で昼食となった。

「…で、何が起こってる?」

早速のシェイカの問いにウィーノはため息交じりで言う。

「実は、ジエヴィアが、別の町の権力者によって支配されていまして」
「な、に…?!」
「…申し上げにくいのですが、シェイカ様のご自宅はもう、存在いたしません」
「…ちっ!」

シェイカは舌打ちをすると杖を自分の目の前に出す。

「…となると、残ってるのはこれだけになるか?」

これだけになるか。
その言葉の意味は、自宅にほかの杖があったことを意味する。

「そうですね…。
 他の魔石杖はもう…」
「…そうか」
「ちょ、ちょっと待って!」

アーティスの慌てた声にシェイカは何だと振り向く。

「魔石…の杖?」
「あぁ。
 俺の一家だけでなく、魔術師は大体、魔石が付いた杖を所持してる。
 ただ…それは人工のものじゃなくて天然魔石。
 その中でも力が強い魔石が魔術師の杖に選ばれるんだ」
「天然…、魔石…」

ぽつり、とアーティスはつぶやくとうつむいた。
―――…あの天然魔石は未だ健在なのだろうか。

そう、アーティスは考えた。

「アーティス?」

シェイカに問われてなんでもないと返す。
それから、彼らの話を聞くことにした。

「最近、この魔術地方の治安が悪くなりはじめたため、各地の魔術師は戻らざるを得なくなってきました。
 …この地方を元に戻すために。
 若者魔術師は大体他の地方に出払っていましたから、この地域に残っていたのは見習いと、熟練者のみだったんです。
 それは、シェイカ様もお分かりでしょう?」
「あぁ…俺の一家もそうだからな…」
「召使いの魔術師などはさすがに仕事でいるのですが、最近はその者たちでさえ、各地へ散りましたから…。
 …その分、強力な力を持つ者は存在しなくなりました。
 そのため、資金さえあれば、この地帯…というか、各町、ですか…を買い取り、領土にすることが出来てしまうようにまで成ってしまったんです」
「…だからスウィルは…」
「えぇ、魔術防域を作成したようです。
 そして、シェイカ様の魔力…。
 確かに波長は合いませんでしたが、シェイカ様の魔力があれば、あの町はこれからも守られると思われたのでしょう。
 ですから、幽閉、ということに…」
「…おかしくなったな…この地域も。
 俺が旅に出てからまだ2年…それでこんなに変わるもんなのか?」
「…変化は、予告無く訪れるものですから」

彼らの話を聞いている傍ら、アーティスは故郷を思い出していた。
プライストラーと呼ばれる者たちがたくさんいる、あの場所を。

「―――…ですので、現在残っているのはオパスのみ、となります」
「…だから、道なき道を進んでオパスに向かおうっていうわけか」
「はい」
「オパス以外、支配されちゃったんですか?」

アーティスが割って入ると、ウィーノはうなづいた。

「はい。
 高慢な権力者によって…」
「そう、なんですか…」
「だから、オパスに行くのが一番安全だな。
 …てか、オパスにあいつがいるかどうかってのが問題になるんだが…」
「あいつ?」
「俺の知り合い」

すぱっと答えると、シェイカは杖を構えた。

「シェイカ?」
「んー、ちょっと黙ってろ」

シェイカは神経を研ぎ澄まし、魔力を高める。

「むぅ…」
「まぁまぁ、アーティスさん。
 もしかしたらすぐにオパスにいけるかもしれませんから」
「すぐに…?」
「シェイカ様が何をなされているかにも寄りますけどね」
「へぇ…」

それからしばらくして、シェイカは杖を地に立てると、誓いを立てた。

「我が名はシェイカ・オプリュスト。
 東のジエヴィアを守護する者…」

その声に、ウィーノは成る程、と頷いた。

「やはり、そうでしたか」
「どういうことです?」
「後数分すれば判りますよ」
「…?」

それから、数分。
呪文の詠唱が終わる。

「…今ここに誓いを立てん!」

その言葉が、言い終わると同時、その場を風が渦巻いた。
青い、風が。

風が止むと、彼らの目の前には、空と同じ青のそれがいた。

「…キーゼ」

懐かしそうに、シェイカは言った。
すると、『キーゼ』と呼ばれた大きな鳥は答えた。

「久しいな」
「何年ぶりだか…」
「3年も経つか」
「早いなー…」

とか単調な会話が続く中、シェイカがアーティスに手を伸ばす。
すると。

「ちょ、ちょちょシェイカ!?」
「お前は先に乗ってろ」
「乗るって…」
「いいから乗りましょう、アーティスさん」

ウィーノとシェイカの2人に促されてキーゼの背に乗った。
うなっていると、キーゼが心の中へ言葉を投げかけてきた。


―――…私の背に隠れているのだ…―――


その言葉にアーティスはただならぬ気配を感じ取った。




俗に。
悪魔と呼ばれる、それらの気配を。









2005/05/31
2007/08/23 加筆修正