魔術都市の騒乱 1






現在。
俺たちは、戒律の町、スウィルにいる。

ここの戒律ったら厳しいことこの上ない。
それは、住人ではない旅人にだって適用されるんだ。


…例えば…の話。

ここは、男は白い服、女は黒い服を着るのが一般とされている。
だから俺は現在白服。
隣でボーっとしてるアーティスは黒服。

しかもなんでか。
この町で足止めを食うことになったんだ…。




「…まったく…シェイカの名も通ったものね」
「俺の名じゃなく、魔術師紋章が目に付いただけだろうっていってんのに未だ納得しないかこのおバカは」
「おバカって言うなおバカって!
 すごい馬鹿にされてる気がしてままならない!」
「馬鹿にしてるからいってんだよ。
 おバカって」
「『お』が付いて丁寧に聞こえてもだまされないわよ!」
「騙す・騙されるの問題じゃないだろ…」


ちなみに。
町長の家の地下室に閉じ込められているという笑えない状況。

ここから脱しない限り…。

俺の故郷にはいけない。
というかアーティスには来て欲しくないんだが…。
いい足止めか…。
いや、しかし…。

足止めをされると、調べたいものがジエヴィアで見つけられないか。
ジエヴィアで資金巻き上げて、そうすれば船に乗ってオパスへいける…。

…て、なんだかんだ言いながら俺も優しいのな。
―――自分で言うのも何だがな。




「なんで閉じ込められなきゃいけないんだか…」
「…シェイカのせいでしょ」
「全部俺のせいなわけ?」
「そうよ」



普通断言しないだろ。
これだからアーティスはジエヴィアの女と違って扱いにくい…。

まったく…。
俺の迷惑の原因は全部お前だってのに気付かねぇのかよ…。




扉が、開いた。

…飯の時間か?
いや…、そうじゃないな…?
…敵襲か!?

「アーティス、下がれ!」
「え、ちょ…!?」

ヴンと時空が揺れて、シェイカは剣を召喚して構えると同時、敵は剣を振りかざしてきたのだった。

「…いい反応を起こしますね、貴方は」

その声がして、シェイカは不審に思う。

試しているのか…?
いや、それならこんなことはしないはずだ…。

…俺が…剣を扱うことが出来るということを…知っている…?

「…お迎えにあがりました、シェイカ様」

あぁ…、そうか。
こいつ、だったのか。

「…ウィーノ」

懐かしい名前だ。
当分…会うこともないだろうと思ってたんだが。

「…お元気そうで何よりです。
 お急ぎください。
 町長が目を覚まさないうちに…」
「うちに…て、お前まさか催眠き…むぐっ!?」

シェイカの口を押さえると、ウィーノと呼ばれた銀髪長髪の青年は、にこり、と笑む。
そしてシェイカに反抗の気がないことを確認して手を離した。

「…ここで話すわけには行かないのです。
 まずは、町から離れて…」
「…。
 判った」

勝手に話を進められてわけのわからないアーティスはウィーノに促されてシェイカと一緒に階段をあがった。







町の外。
急いで走ってきたためにアーティスは少々疲れ気味だった。
なのにシェイカはなぜか疲れた様子を見せない。

「…気が…変わったな」

シェイカが町の方を見ながらそう言った。
するとウィーノも続けさまに言う。

「…はい。
 ですから、シェイカ様が捕獲された、ということです」
「…他に魔術師が増えると困る理由があんだな、この町。
 …以前とは違う、何かが…」
「…他に魔術師って…。
 どんな感じの?」

アーティスの問いにシェイカは面倒くさそうにしていると、ウィーノが答える。

「シェイカ様は無族の為にすべての属性を操れますから、なんら変わりはないのですが…。
 他の魔術師には大体、属性がありますから、それで感知できます。
 現在の属性は―――、地。
 大地の力です」
「む、無族?」

出てきた言葉にアーティスは質問した。
それにウィーノが答えようとしたのだが、シェイカによってとめられた。

「シェイカ様?」
「そんなの話してどうする。
 俺の過…いや、なんでもない」

シェイカは言おうとした言葉を切り、視線を再度スウィルの方へ向けた。

「…昔の戒律と変わらないのは、服装か。
 だが…、なんなんだ、この魔力…。
 いくら俺でも、これは半端ないって判るぞ」
「そうですね…。
 無族の…しかも、シェイカ様にお分かりになられるのですから、相当な魔力です。
 これに変わる前は、水でしたが…」
「…一体いくつの属性変換が成ってる…?
 こんなもの、一人の魔術師には出来るはずがない…。
 俺でさえ出来ないことなのに…」
「…魔術師本人じゃないとしたら…どう?」

アーティスの声に、シェイカは驚く。

本人ではない?
そんなこと、できるのか…?

いや…それよりも何故…アーティスは…そんなことを、思いついたんだ…?

まさか…それに関係するものを知っているとか…そんなはずはな、い…はず…。
…て、言葉の使い方間違ってるぞ、俺。

「…魔石、とか」

アーティスは例えをそう答えた。

魔石。
魔力を持った石のことを俗に言うが、それは不確定ばかりだ。
宝石に魔力が宿っていたり、ただの石ころに魔力が宿っていたりとわからないのだ。

「…人工魔石を作れば、不可能は可能になるわ。
 …それが…あ、いや、なんでもないから!」

アーティスは慌てて手を横に振りながら次の言葉を遮った。
だが、シェイカは追求しなかった。
先ほど無族の話で答えなかったからだ。


「…人工魔石…か。
 それの魔力波長と俺の魔力波長があわねぇから閉じ込めて魔力が流れるのを防いだ…ってのも考えることは出来るな」
「…ですが、こちらよりも…シェイカ様。
 私はあなたをお迎えに上がったのですから、お分かりでしょう?」
「…あぁ判ってる。
 ジエヴィアに行けって事だろ。
 …全く、あそこの娘といったら…」

何かをつぶやきながら、ウィーノに促されてシェイカは足を進める。
それに続いてアーティスも。
次に向かうは、シェイカの生まれ故郷。
夢見鳥の町、ジエヴィアだ。

「ところで…」

とウィーノは切り出す。

「シェイカ様とアーティスさん…て、恋人同士か何か」
「こんなのと付き合いたくなんかないです!」
「頑固否定する!」

と即答するのは当たり前。
ウィーノは残念そうに答えた。

「ようやくシェイカ様に女性の一人や二人、できるかと思ったのですが…」
「オイコラ待てや。
 俺がモテないとでもいっとんのかお前は」
「どうにかしてください、その女好きの性格」
「お前に言われたくないけどなぁ?」
「あ!アーティスさん!
 シェイカ様に何かされてませんか!?」
「話しかえるな!」
「シェイカ、女好きだったの!?
 て、あ、いえ、何もされてないですけど…?
 それが何か?」
「あれ…おかしいですね…。
 普通のシェイカ様ならすぐに…」

どかん!と音が鳴ってウィーノの目の前で爆発が起こったのは、言うまでもなかった。








2005/05/30
2007/08/23 加筆修正