「う゛ぅあぁあああああ…!!!!」
「奇怪な声を上げるのはやめろ。」

ばしっ。
と音が鳴ってアーティスの頭をシェイカがワールドマップを丸めた筒で殴った。

「だってぇ!
 長いんだもの!」
「そりゃ最西端の町だからな」
「船でいけば楽なのに!」
「そこまで船で行ったら莫大に費用がかかるんだよ、バカ」
「何を―――――――――――――!!」

バカ、と強調され獣のように食って掛かるアーティス。
相変わらずそれを適当にあしらうシェイカ。

いつもの会話がとまることは無い。
冷静に突っ込むシェイカとバカと思われて仕方ないアーティスのご一行は、現在、魔術都市オパスに向けて長旅中である。





始動の時 2






「とりあえず、オパスに行くのは判ったけど」
「疑問でもあるか?」
「いや…途中、町があるはずよね?」

その問いに、シェイカはさらりと答える。

「無い」
「ぇええええ?!」
「…というのは冗談で」

くっくっと喉で笑いながらシェイカは言う。
アーティスのその反応が余程面白かったらしい。

「オパスに行くまでに、芸術都市リァミストスと戒律の町スィウル、それから…」
「それから?」

問うと、ものすごく嫌そうな顔をしてシェイカは言う。

「…俺の…出身地が、ある」
「えぇ!?
 マジっすか!?」

アーティスは嬉々として聞く。

「ウェスター地方は魔術に秀でてるって言っただろ!」

再度地図を丸めた筒で勢い良く、思い切り殴られる。
ばしっ、といい音がまた鳴る。

「うぅぅ…。
 …んで、都市異名もプラスして教えて」
「都市異名プラスでかー…?
 夢見鳥の町、ジエヴィア」
「ゆめ…みどり?」

3度目の正直か。
再度、地図(以下略)で殴られる。

シェイカは何故かワールドマップを手にしているのが似合うからおかしい。

「区切りが違う。
 『夢見の鳥』で『夢見鳥』。
 夢見鳥ってのは、蝶の異称なんだよ」
「ちょうちょの異称?」
「ああもうお前に説明する俺が馬鹿だった。
 お前は俺が説明したところで判るはずが無いんだ、バカだから」
「最後の言葉がものすっごく気にかかるんですけど!」
「気にしない!
 さ、行こう」
「そのままスルーしやがったこいつ!!!」

このやり取りももう日常茶飯事。
変わることはない。




そして、一番近い芸術都市リァミストスへ足を踏み入れた。


「なんか、ゆっくりした感じでおだやかーでいいなぁ…」
「言っておくが今日一晩泊まるだけだからな」

念のために釘を刺す。
そう、念のため。

「判ってるって!」
「………」

こういう風に即答するときが一番厄介なのである。
必ず何かをやらかす、それが今までの経験だ。




夜。
やはりアーティスは一騒動起こしそうだ。

宿の部屋の窓から飛び降りると、路地裏へ出る。
それから、中心街へと足を進める。

芸術の都だけあり、夜でも賑やかに芸術作品にライトが灯っていた。

「わぁー…!!」

アーティスが感嘆の声を上げる。
目の前には、光り輝くイルミネーションがあった。

天馬が、空を翔る。
そのイメージのような、イルミネーション。

「……捕まえた!」
「ぎゃぁあ!!」

一瞬の悲鳴。
そして、アーティスの肩をがっしりと掴むのは、シェイカ。

「あ、シェイカ…」
「あれほど俺は言ったが?」
「あ、あはははははは…」
「笑うな!
 戻るぞ!」

そういってシェイカは強引にアーティスを引っ張る。
だが、

「そんなコンを詰めたってどうにもならないじゃない!
 シェイカだって少しは安らげ! この万年働き者ぉおお!!」
「働いてて何が悪い!
 俺には俺なりの仕事がある!!」
「仕事があっても休まないと体が壊れるんだから!!」
「俺はお前と違ってそんなにヤワじゃねぇ!!」
「今はそうでもその内ぶっ倒れても私おいてくわよ!?
 このおせっかい魔術師!!!」
「おぉぉ、いってくれんじゃねぇか!」

これこそが迷惑の元…なはずである。

そして、アーティスは、シェイカの腹に拳を決めた。
腹を抱えてしゃがみこむシェイカ。
こればかりは援護と近接で差が出るのである。

仕方なくシェイカは折れると、アーティスに連れ回されることとなり、翌日睡眠不足でアーティスに怒ることになるのだが。








2007/08/23 加筆修正