:: 17 好奇心と自己否定 前編 ::

 ベレンディール6階の踊り場・ウェディール。そこに、火神と白神は居た。セーフェがフォーラに質問を浴びせて、フォーラがそれに答えている。

「…っ、嘘、だろ…!?」
「嘘じゃない。事実だ」
「…じゃあ…、クズルが倒れてたのは…」
「交戦した後、だったんだろうな…」

 フォーラは出血多量で倒れていたクズルを、殺人があったんじゃないか、と疑われないようにしてからクズルを抱えて天上界へ戻った。戻った直後、運良くなのか運悪くなのかカヴェノに遭遇した。そしてクズルを部屋に寝かせ、カヴェノが回復をしようとした矢先、セーフェがフォーラを呼びに来た。
 そして、現在に至る。

「…まさか…奏が魔界に…」
「…恐らく、ノーベだろうな…。…ついに…動き出した、か…」

 ぽつり、とセーフェが呟くと同時、上の階―――そう、クズルの部屋からおぞましい音が鳴り響いた。
 それが何なのか理解できているのか、顔を引きつらせるセーフェ。それを見て、何があったのか良く判らないフォーラは首をかしげる。

「…まずい、始まった」
「何がだよ」

 きっぱりと 「師弟喧嘩。」と言い放つと、セーフェは足早に下の階へ降りる階段へ向かう。助けに行かないのかと問うと、手を出した方が怪我をすると返される。そんなにその師弟喧嘩とやらは酷いらしい。
 フォーラはそのことを怪訝そうに尋ねるが、セーフェは顔を背けてさっと階段を降りていった。そしてセーフェの姿が見えなくなって、どうしようかと思った時、ビキッ、と何かが鳴った。不思議に思って上を見上げる。
 それから、まさかそんなことがあるわけがないだろうと階段を降りようとして、それは起きた。

 ビキビキ…ッ、とまず割れる音がして、ドゴォンと上から派手な音がして、バキッ、と音がして、ついにそれは起きる。上から砂が降ってくると思えば―――床がぶち抜けたではありませんか。

「っぎゃぅあああああああああああ!!!!!! マジで床抜けやがったよ!?ちょ、ま、この城そんなに脆いのか!?それとも強すぎるのか2人が!?つかどっちでも構わんけどとにかく床直せよ俺部屋戻れないじゃないかよおおおおお!!!!」

 思わずフォーラは早口で捲し立て上げた。その声と同時にドンガラガラガッシャーンと漫画にありそうな効果音で7階の廊下の床がぶち抜ける。
 普通に殴りあう音がするのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。だが、それは気のせいでは終わってくれなかった。

「…ここなら広いから思う存分やれるだろ」
「えぇ…、そうですね」

 その言葉が聞こえた。それがまるで合図だったかのように喧嘩は戦いへと発展する。 というか既に喧嘩どころか普通に戦いに発展しているように見えた。
 魔法こそ使ってはいないものの両者の武術が空恐ろしいのだ。片方が攻撃すればもう片方が受け止める。その繰り返しで目を覚まして早々水神コンビは何をやらかしているのだろうか。
 いや、そもそも、この喧嘩の原因は一体何なのだろうか。そう考えていると抜けた7階の床からレーヴェルが飛び降りてきた。

「うおっ、レーヴェルっ」
「フォーラ、あれ、どうにか止められないか?」
「無理言うな。最高神のお前が止められないなら俺にも止められん」
「…止めないとまた以前の二の舞に…」

 以前の二の舞に、そう言ったレーヴェルにフォーラはつかさず「前にもあったのかこの恐ろしい決闘が?」と尋ねた。

「あぁ、あれは姉さまが最高神でいらした時代だったけど。私もまだ天使でクズルが神見習いになってすぐ、だったか…。理由は判ってないんだがいきなり喧嘩をおっぱじめたんだ。そのときの被害は…3階〜1階」
「…もしかして、あの2階のベリアッツェが被害になった…?」

 ベリアッツェというのは2階にある書庫の一つで、世界の歴史書を主に扱っている書庫だ。

「良く判ったな…」
「だってあそこ床の特定の場所がギシって軋むから」

 調べ物でベリアッツェに良く入るんだよ、そう言って、それからクズルとカヴェノの最早喧嘩とはいえない喧嘩を見る。

「誰か止められる人は居ないのか?」
「リアズがあと10万若かったら止められたそうだ」
「さいでございますか…」

 はぁ、とフォーラが短く溜息を付く。そして顔を上げた瞬間、クズルの驚き混じりの声が聞こえた。
 ガシャン…ッ、とクズルがカヴェノに投げられてガラスが割れたのだから、外に放り出されて驚くだろう。そして、クズルは外に勢い良く放り出され、落下していった。

「カヴェノ様ぁああああ!?」
「ん…? あぁ、フォーラか。どうした?」
「あぁ、って何無駄に達成感を得て爽やかなんですか!」

 水神が世代交代をしてから、専ら突っ込み役になっている気がする。そう、それ以前はクズルが天上界随一の突っ込み役だったというのに…。

「まぁ確かにすっきりして爽快だ」
「自分の弟子を投げておいてですか…」
「あぁ…。でもこうしないと、あいつは無理にでも1人で魔界へ行ってただろう」

 その言葉に、確かに今のクズルならやりかねない、と合点する。

「頭を冷やすには外に出すのが一番良い」
「だからって、ガラス打ち壊して外にクズルを投げ出しちゃダメよ、カヴェノ?」

 その声がして、カヴェノの後方をフォーラは見る。そこには風神、ウィレール・レヴェーがいた。
 その声に、「お前まで言うか」とカヴェノが呆れながらに返す。

「だって、仮にもあの子は昔と違って、今は水神。元素神なのよ?」
「そりゃそうだがな…。かといって部屋ん中で水ぶっ放すのもまずいと思ってな…」
「それなら喧嘩しないで外に引きずっていけばよかったじゃないですか」

 むすっとした顔でフォーラがカヴェノに言うと、カヴェノは「あぁその手もあったな…」と恥ずかしそうに言ったのだった。

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2006/07/31,08/13
(2010/08/22 加筆修正)
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