:: 14 truth 後編 ::

「その頃、元素神以外の神が居たのは知ってるな?」
「あ、あぁ…」
「『私が殺した』―――。そう言われている神…お前も、名前ぐらい知ってるだろ」

 ことん、とカップを置いて、セーフェは言葉を続ける。

「ラヴィリト・リデスルス。奴は元素神としての能力は持たなかった。だが、元素魔力以外にずば抜けた魔力があった。だからレヴェーラは例外の神として奴を神にした」
「そうか、変神(へんしん)、か―――」
「そう、変化の能力に長けていたからな…。だからレヴェーラは奴を神にしたんだ。その能力をラヴィリトが変幻自在に使えるようになってから起こった事件だ。だが、私は、ラヴィリトのことを殺した訳ではない。ラヴィリトは、私を助けたんだ―――」
「え…」
「私がそれよりつい100年ぐらい前魔界に喧嘩を売ったもんだから、私は魔界の者に狙われていた。それをラヴィリトは知ってて―――」
「…まさか、ラヴィリトはセーフェに化けた、っていうのか…?」

 そのフォーラの言葉にそうだ、とセーフェは言う。

「そして、私の代わりに死んだ―――」
「じゃあなんで…、何でセーフェはそれを言わなかったんだよ!?」

 そうフォーラが怒鳴ると、セーフェは顔を歪めた。

「言えなかったんだ…ラヴィリトが死んだのは私のせいだったから。だから神格を剥奪されても良いと思った。私が殺したも同然だったから―――」

 ぽた、た…っ。セーフェの目から雫が溢れてフォーラが慌てる。女性が涙を流した姿なんて見たことがなかったフォーラは、どうすればいいのか判らなかった。ましてや、普段泣きそうにもないほど気の強い女性が泣いているのだ。

「だ、だ、大丈夫か!? あぁ急に怒鳴ったりしてすまん!」
「いや…私が悪いから気にするな…」

 確かにラヴィリトを殺したのは私だから。私の代わりに、彼は死んでしまったから。そう思いながら、セーフェは生き続けてきた。
 光の神である白神という位をはく奪されてもなお、だ。

 大丈夫だから、とセーフェは話を続けた。

「そして、彼は―――黒妖精になった。それがヴィリト。本名ラヴィリト・リデスルス。クズルの使い魔だ」

 今なお、変身の能力を持つ者。宿業を負う、黒妖精。

「…今度は―――奴は、クズルの為に死ぬつもりだ…」

 もしも、彼が殺されそうになったら、そのときに今度は、クズルに化けるつもりでいるはずなのだ。

◆ ◇ ◆

 クズルもソファに腰をかけ、膝の上で手を組む。

「だけど、レヴェーラは俺を殺せない。何度も殺そうとしたんだって言ってた。そのとき、それを判っていた魔界の者が俺を殺しに来たんです。でも、レヴェーラは俺を庇った。この場から逃げろと、何処か別の世界へ行けと、そう言って」
「…そうか、だからお前は人間界に逃げて『水未浩司』になったのか」
「…そうです」

 それから、ずっと人間界で学生に擬態していた。悪魔や天使、神々に見つからないように人間として生きる道を選んでいた。

「それが、そのときの全貌…ということになります」
「その後、お前は人間界でどうしたんだ? 人間界にいたときにノーベとか言うのが関わってきたんだろうし」
「高校生に擬態して生活していました。そうしたら、突然ノーベが俺の部屋に現れて、俺に戦えといったんです。敵と戦えと」
「―――その敵が、フォーラとリアズ、ということか」
「そうですね。彼女が1人でそう仕向けていたようです。戦わせる為に。でも、それは失敗に終わったものです。俺の中の龍神が、それに気付いた。そして、フォーラがセーフェを連れ戻してきて、俺と戦って―――」

 その前に何か忘れている、とクズルの頭の中で判断が下されていた。何か、というわけではなく、その存在自体の話を忘れていたのだ。
 自分が意図的に誰にも言わないつもりでいた、少女の名前だ。

「言い忘れていましたが、フォーラとリアズが敵、ということで、その敵の使いが香野 奏という人間の少女でした。彼女は―――ラーダスの子孫だったんです」
「子孫…子孫なんていたのか…ラーダス…。懐かしい名前だな…」

 禁忌を犯した神の名。だけれど、カヴェノにとっては懐かしい知り合いの名だった。

「俺は水未浩司とクズル・レイェンとの2つの姿で戦っていました。2人同時に出現、何てのは無理でしたのでヴィリトに水未浩司になってもらっていましたが」
「お前も良くそれを考え付いたな」
「ヴィリトは変身の能力が恐ろしいですから」

 そういってクズルは笑ってみせる。それに釣られるようにカヴェノも笑みを見せると、その笑みを一瞬で消し去った。

「…ヴィリト…、奴は今何処に居るか判るか?」
「ベレンディールには居るはずですよ。呼びましょうか?」
「いや、いい。急用でもないし」
「そうですか」

 クズルは知らない。あの時の真実を。だから、セーフェがラヴィリトを殺した、とそう思っている。
 クズルは知らない。ヴィリトがラヴィリトだということを。だから、判らない。そのときの真実を。

 そのことを、カヴェノはいつクズルに言おうか…、そう思案しながらその部屋を立ち去った。

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2006/05/06
(2010/06/04 加筆修正)
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