:: 14 truth 前編 ::

「…レヴェーラが前世、人間だったときに俺の姉だった、という話は知っていますか?」

 その言葉に、カヴェノが驚いた。知っているものだと思っていたが、どうやらカヴェノは知らないらしい。

「ご存知ではなかったんですね…。レヴェーラから聞いているかと思ったのですが」
「…前世が姉弟だったから…私に何も言わずにただ『世話をしてくれ』と言ったのか…」
「…そういう経緯でしたか…」

 カヴェノとレヴェーラが双子だと聞いてこれは運命なのかと、そう思ったこともあった。あながち間違いではなかったのかもしれない。

「お前とレヴェーラが前世、姉弟だったというのならその能力にも納得がいく」
「どの能力も申し分ない力を持っている、ということですか」
「あぁ…。レーヴェルを遥かに上回っているのに水神止まりのお前がおかしい」

 腕を組み、足を組み、ソファに腰掛けそういうカヴェノにクズルは苦く笑う。

「…あの時の真実…それをお話しするのは師匠が初めてになります」

 あまり話したくなかったから、聞かれても話そうとしなかった。だが、今度ばかりは相手が相手。レヴェーラの姉だ。

「…彼女は、俺が前世弟であったと知っています。知っていて、俺の恋人だった」
「恋人、というのは誰もが知っていたが姉弟というのは誰も知らなかった事実だな…」
「そうですね、言いませんでしたから」

 クズル自身ですら、それを知ったのは彼女に言われてだったのだから。

◆ ◇ ◆

 その時代、神々は魔界の者と交戦を強いられていたんです。師匠は隠居なされていて被害がなかったと思いますが。

 突然奴らは天上界に攻め入ってきた。それに応戦する形で神々が戦い、一応の所戦いには勝ちました。
 けれど、レヴェーラはその時に魔界の者に言われたんだそうです。お前の恋人であるクズル・レイェンは前世お前の弟だっただろう、と。
 それを知っているはずがないのに、知っていた魔界の者がそう言ったんだそうです。

 血のつながりがある者同士が恋人だと、ただそれがわかるだけでも禁忌だったその時代、それをばらされたら天上界追放では済まない。俺も、レヴェーラも死刑を持って償わなきゃならない。

 実際、『償う』という言葉の使い方が間違っていると思う。しかもただそれだけで死刑なんて。
 レーヴェルは自分が死ぬということよりも俺が死ぬということを嫌がった。だから俺を殺さない為、魔界の者に従った。

 魔界の者の要求は徐々にエスカレートしていった。そして、当時の魔界の者はテュエラスを嫌っていて、奴が魔界の者の力では殺すことが出来なくて困っていた矢先、殺せる方法を見つけた。

 それが、俺を殺すということだった。

◆ ◇ ◆

「なぁ、セーフェ」
「何だフォーラ」
「聞きたいことが山程あるんだけどよ」
「私で答えられる範囲なら答えるぞ」
「そうか、じゃぁ答えてもらう」
「私が答えられる範囲、だからな」
「判ってる判ってる」

 再度言うセーフェにフォーラは苦笑した。

「…クズルのことなんだけど」
「それは私より本人に聞いた方がよさそうな内容な気がするのは気のせいか?」
「気のせいだ。本人にゃ聞けない話だから」

 溜息を漏らして、フォーラは紅茶のポッドを出してきて、葉を注ぐ。

「…本人には聞けない話、か…」
「もしかしたら想像が付いてるかもしれない。俺はアイツよりちょっとばかし年上なだけだが、俺よりも年上のセーフェのほうがクズルと関わりが大きい。だから俺はセーフェに聞くことにした」
「賢明な判断だと思うよ、それは」
「今回ばかりは猪突猛進はやってられなそうだからな…」

 慣れた手つきでフォーラは少しばかり冷めた湯をポッドに注ぐ。

「…俺、未だに知らないんだよ、ヴィリトっていう妖精のこと」
「確かに、アレは謎の妖精だといわれてるな」
「セーフェも知らない、とか?」
「…知らないわけがない。知りすぎていて、嫌な位だ」
「…話してもらえると助かるんだけど」
「―――…。良いだろう、今の状況が状況だから話してやる」
「有難う、快く了承してくれて」

 彼女が快く了承するなんて珍しい。だからお礼を言わずには居られなかった。

「…あれは、私が白神に即位して1500年くらい経ったころか」

 クズルがカヴェノの弟子で、天使から神見習いになったころ。フォーラが神見習いとして修行中のころ。彼女は、そのときに即位した神だった。

「ある事件が起きた」

 フォーラの淹れた紅茶をすすりながら、セーフェは言う。

「その事件は、お前も知っている。知らないはずがない。私が起こした事件なのだからな」
「まさか―――」

 そのまさか、だ。そうセーフェが言って、フォーラが目を見開く。

「…私が神格を剥奪される元となった事件だ」

 この事件は、一部の者だけが真実を知る。

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2006/04/30,05/06
(2010/06/04 加筆修正)
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