:: 12 始まりを知らす鐘 後編 ::

 空白の世界。そこに少女が居た。それはまだ、あどけない少女だった。
 彼女はふっと力を抜くと何も無いその場所で、舞った。

 するとそこに、7つの光が生まれた。それらはそれぞれ色を持ち、赤、青、緑、茶、黒、黄、灰であった。

 少女はそれを確認すると、微笑しながら姿を白に溶かす。少女が消え、その光が、次々と形を作ってゆく。

 まず、灰色の光。それは人型となり、光が収まったとき、そこには美しく長い銀糸を持つ青年の姿があった。ゆっくりと目を開けて、辺りを見渡す。

 赤。光が形を形成し、姿を現したのは少女。赤き長髪の、鮮やかな少女。

 茶。光を裂くように、茶髪の青年は姿を現す。青年は疲れきった様にその場に座り込んだ。

 青。まず一発目が足蹴り。そんなで出てきたのは青…水色に近い色を髪の色素にもつ青年。やる気がなさそうに頭をがしがしと掻く。
 その姿は、現在の水神・クズルと取って代わらない姿だった。

 黒。光が割れて、鎌を手に持つ黒髪の青年が姿を現す。ふと視線を青い光から生まれたそれに向け、緑の光を見、そして視線を伏せた。
 その鎌、髪の色からして、テュエラスと変わりは無い、そんな青年。

 黄。その色が形成したのは、少年。まるでセーフェをそのまま男にして髪を切ったかのような容姿。ふと赤い光から生まれた少女を見て、直ぐに視線をそらす。

 そして、最後。緑の光が形を完全にした。黄緑色の髪をもつ女性へと姿が変わる。
 ―――それが、奏そのもの、だった。

◆ ◇ ◆

 彼らに、クズルの姿は映っていなかった。そのクズルは、その場から動けなかった。緑の光から生まれたそれが、奏そっくりだったからだ。
 奏は、神ではない。神の力を継いでいても、神ではない。
 だが、今視界に入ってくるそれは、明らかに奏だった。そして、青の光から生まれたそれも、まるで自分のようで。

「…俺…?」

 いや、違う。クズルではない。容姿が似ていても、彼は自分ではない。

「…あれは…テュエラス…、なのか…!?」

 黒の光から生まれたそれ。それはテュエラスそのものだった。
 奏が風神でテュエラスが黒神。クズルの頭の中はパニックだった。そう、それも珍しく混乱を起こしていた。

 その7人が無言で手を前に突き出す。そして、光が集まり、一瞬のうちにその場は平原と化した。
 そよ風が、クズルの髪を攫う。

「…これが…始まり…」

 世界の、そして、神と言う存在の、全ての始まりだ。

◆ ◇ ◆

 急に意識が引き戻された感覚に陥って、少女の声が聞こえてきた。少女は、彼らの名前を紡いだ。

 彼らはそれぞれ、最高神、レフェラシア・イヴェリーナ。火神、フェオ・ケスタ。地神、ジャスタ・ヘシヴェス。水神、キウェロ・テシフェエル。風神、ウィリア・リリカリア。黒神、ユウィエル・パラジィ。白神、アリエラ・ロスロ。
 そんな名前だったそうだ。

◆ ◇ ◆

「…これが先代…。初めての…神…。そして、この世界が…」

 地球という世界の始まり。
 辺り一面生い茂る緑が、眩しかった。青く澄んだ空が、美しかった。そうやって呆然と空や辺りを見回していた、そう、丁度その時。一瞬にして世界は崩れた。
 草花が枯れ、辺りは戦場と化していたのだ。

 この変貌振りは、一体なんだ?

―――これが、戦争。初めて起きた、神々の戦争。

 そう、クズルの頭に響いてきたのは少女の声。

―――ユウィエルが起こした、反抗よ。

 黒神、ユウィエル。テュエラスに似ている者だ。
 彼が起こした反抗が、戦争になったのだ。

―――ほら、あそこ。

 少女の声に促されて見たところには―――。

「…ユウィエル! なんで…なんだって言うんだ!? こんな事をして…お前に何が得られるというんだ!」

 そう、声を上げたのはキウェロ。水神だ。クズルに似ている神。
 そしてその隣には風神、ウィリア。奏に似ている女神だ。

「得られる物? そんなものはないな。ただ俺は…お前や神がムカつくだけ」
「貴方だって神でしょう、ユウィエル!」
「俺は神でも終わりを意味する悪魔。本当は神じゃない。キウェロだって本当は神じゃないだろ」
「あぁそうだろうね…!僕だって神とは言いがたいだろうさ!ユウィエルを封印する為に生まれた、なんて信じたくも無い。同じときに僕達は一緒に生まれたのになんでそうなってるのか知りたいくらいだ!」
「元々なにかしら対になるモノがなきゃならない。だからやったんだと。世界の…俺たちの創造主は」
「…―――?!」
「ずっと平和で生きてなんて居られないんだよ…。戦いがあって人が死んで、それが歴史となって紡がれていって、そうして時代というものが出来上がる。だから…俺は、お前を殺す」
「な…!」
「そして、俺も死ぬ。お前を殺せば俺も死ぬ。お前が俺を殺せばお前も死ぬ。どちらにせよ、俺たちは対。繋がってる存在だ」

 そういって、ユウィエルは鎌を構えてキウェロに向かっていった。キウェロはウィリアを突き放すとユウィエルと剣で対峙する。

 結果は、相殺、だった。
 どちらかが先に殺すのではなく、ほぼ同時だった。

◆ ◇ ◆

 ふっと景色が遠のいて、水が揺らめく空間に戻った。

「…これが、過去か」

 自分が生まれるよりも前の世界。何も知らなかった水神は黒神を殺して自身も死んだ。

「…あの子が言ったのは…こうなるな、ということ、か…」

 同じ歴史を紡ぐな。それは同じ事を繰り返すな、とクズルに警告をしているようにもとれた。

「死ぬもんか。テュエラスも…死ぬことを望んでるはずじゃない。俺が助けなきゃならないんだ…」

 そう決意を胸に決めたと同時、クズルの意識はふっと揺らいだ。

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2006/02/19,25
(2010/05/08 加筆修正)
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