:: 07 恐怖と驚愕の間 後編 ::

 前を走っているクズルは、浩司と違って速度が早い、と奏は感じた。姿が変われば身長に変化もあるのだろう。

「どうして魔力が…!」
「だから私を殺すためだ!」
「や、断定されると返答に困るわよ…!」

◆ ◇ ◆

 クズルが向かった先は、中央広場。中庭だった。ここは、人々が休憩のために集まる場所。

「…ここ…?!」
「…ここで魔力が凝縮している…。だが…、何故だ…? 判らない…」

 奏は「判らない」と発したクズルにこっちが判らないと質問した。クズルにしか判っていないのだ。

「魔力が凝縮されているのは確かにこの場所だ…。だが、この場所、としか。普通ならその人物を特定できるはずだ…」

 何故。そう何度も自分に問うクズル。それは奏にも判らない。判るはずがない。そう考えていると、も゛、と地面から何かが現れた。

「な、何ぃい!?」
「は、ハニワぁああああああ?!」

 まるでポ●モンのディ●ダとダ●トリオがマ●ラタウンでオー●ド博士を運ぼうとしたかのように。そのハニワ軍団はいきなり地面から現れ、もきゅもきゅもっさりとあっという間にクズルと奏を囲んでしまった。
 その間、不思議なことに、一般市民はハニワ軍団によって外へと移動させられていた。
 クズルも奏もハニワに囲まれ逃げ場を失う。人を避難させているハニワを見て、害をなすつもりはないのか、と疑問を口にした。ハニワたちは何がしたいのかなと口にしながら思い切り呆れる奏にクズルはその厳しい表情を変えることは無かった。

「…まぁ…、何がしたいのかは判らないが…。敵ならば…斬る!」
「えぇえー?!」

 奏が驚いて声を上げると同時、クズルの手には銀色の細身の曲刀。 この人は本気だ。クズルが剣を構えてばったばったとなぎ倒すのを呆然と奏は見ていた。
 水龍じゃなくても十分に強い。それでいて水龍の力を持っている。全ての力を一発必殺につぎ込んでも、彼には勝てない。そうであると、確信した。そう確信して、奏は周りを見回すと、真っ二つになっていた多大なハニワが形を変えてゆくのを目撃した。

 そに驚いているとハニワは分裂増殖を始めた。それに驚いた奏の悲鳴交じりの声が聞こえて、クズルもはっとして其方を見た。するとやはり、クズルが真っ二つに切断したハニワが別々に形を変え、それぞれ元の姿に戻ったのだ。

「ど…どうなってるんだ…?」

 しかも、奏を通り越してクズルに近寄ってくる。

「クズル!」
「え、な…うわっ?!」

 も゛。一匹目、顔に直撃。
 も゛も。そして残りがクズルにくっつく。

「な、何だぁああああああああ?!」
「ちょ、クズル大丈夫!?」

 ハニワの群れにクズルは埋まる。奏がハニワの群れを掻き分け、あちらそちらにぶっ飛ばすがまたハニワは戻ってくる。
 何故だろう。クズルがハニワにモテている。
 それが不思議に面白い光景なのだが、だからと笑っていられるわけも無く。ハニワは増えるしくっつくしでクズルもどうしようもなく、中でもがいても何も無い。とりあえず奏の協力もあって顔だけ、群れの中から出すことに成功した。

「…な、何なんだこのハニワ軍団…」
「私もさっぱりなんだけど…」

 とりあえず掴んで地面に置く。が、やはりハニワはクズルのほうへと走り出す。

「…懐かれてる?」
「…見に覚えは無いが、そのようだ」

 ハニワをどかしてもどかしても戻ってくることが判った以上、無駄に体力を使うわけにもいかない。のんびりと考えよう、と打開策を考えていたそのとき、疾風のように現れた少女が、ピコピコハンマー片手にハニワを叩き始めた。すると、見る見るうちにハニワの姿が減っていくではないか。

「コレで…最後!!!」

 ぴこんっ。と音がして、最後のハニワが煙となって消えた。そのピコピコハンマーを持った少女はくるりとクズルのほうを向いて、一言。

「失礼したわね。うちのハニワが多大なる迷惑をかけてしまったみたいで。地獄の牢屋にぶち込んで置きますんでどうかお許しを」
「え、あ、あぁ…?」

 何が起きたのか理解できないまま、危害を加えられたわけではないから許すも何もない、と口にする。
 目の前の少女は、一礼をするとレーヴェルより伝言を言付かっている、と口にした。

「…『開幕も閉幕も、それはお前たちに任せよう。だか、彼女が愛し作り上げた世界を壊すことだけは罷りならん』とのことです」
「ちょ、ちょっと待て…!すると…レーヴェルの遣いなのか?!」

 そういわれて、少女ははっとする。ハニワを倒すことばかり考えていて、自己紹介を忘れていたのだ。

「紹介が遅れました。泡沫 燐、死神です」
「し、死神ー?!」
「死神が何故…。死は魔界の象徴のはずだぞ!?」
「私はこの世界の出身じゃないわ。たまたまレーヴェルに捕ま…こほん、呼ばれてこうして下界しただけのこと。だから役目はコレだけ。あんた…クズル・レイェンに伝言を伝えろって言われただけよ。そしたらくっついてきたハニワが一目散に駆け出していったから追いかけたらあんただった。だから私はその処理をした。伝言はしっかり伝えたからコレで任務は終了。じゃね、ハニワに好かれた水神様」

 にやりと笑って、少女はぱっと姿を消したのだった。

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2005/10/10
(2010/03/21 加筆修正)
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