*13 変遷/前編*

「……なんだか、とてもデジャブだわ」

 ぽつ、と葬儀が始まる前に唯が呟く。何が、と冬哉が問うと、昔の話、と短く返される。昔にも同じことがあったのだと言うことは俐咋にも判った。
 それはつまり、星治が一度死んでいるということになる。俐咋がそんな疑問を思っていると、唯がそれを察したのか小さな声で呟いた。

「…あの人、今は神様でしょう」
「ああ…確かに、そうだね。父さん、戦の神だもんな…」
「人間としての一生を既に終えているの。だから、その時の葬儀を、思い出してしまってね」

 だからデジャブだと言ったのだ。既に人間として、一生を終えているから。それに俐咋が納得したところで、葬儀が始まった。
 この葬儀の喪主は勿論、妻である唯なのだが、軍がその費用や会場を持つと言い、盛大なものになっている。葬儀がこんなにも大きいものでいいのか、と俐咋は考えていたが、芸能人の葬儀を思い出して、ある意味それと同じなのかもしれない、と納得した。

 葬儀に訪れた学生や軍人の多くが涙を流し、献花をする。早すぎる、と言う声すら聞こえてくる。その声を聞きながら、俐咋も献花をした。
 確かに早すぎる。そう思うのは、俐咋が星治と出会ってからの期間が短いからなのかもしれない。

* * * * * * * *

(こんなに怖いと思ったのは、初めてだ……)

 星治が力を開放する、と言って、この世を去った。その時からだ。冬哉の体の中に大きな魔力が渦巻いている。それは冬哉が生まれてから持っていた本来の魔力。その魔力を両親が封印していた。
 封印されていた魔力が自分の中へ戻ってきて、冬哉はその魔力の強大さに驚きを隠せないでいた。

(こんなに魔力を持っていたなんて、思わなかった)

 自分の魔力の多さに目眩すらする。今まで持っていた魔力の何倍もの魔力が急に流れ込んできて、体がついていけてない。ぼうっとしていると魔力に意識を持って行かれそうになる。
 自分の父の葬儀でありながら、葬儀どころではなかった。

 冬哉は葬儀の席を立って、ふらついた意識のまま廊下に出た。魔力が暴走してしまうのではないかと怖くて、その場に居られなくなった。
 誰も通らない廊下で、壁に寄り掛かって座り込む。魔力に気を使っているだけなのに、こんなにも疲れるなんて、と自嘲した。

 大きく深呼吸をして、ゆっくりと息を吐き出す。人の気配がして、そちらを振り向くとそこには母である唯の姿があった。

「冬哉」
「なに、母さん」
「管理者権限、今のところ私が持ってるけれど、数日以内にあなたに渡すわ」
「数日…!? なんでそんな…」
「魔力の多さ、今まで詳しく言ったことなかったけど、私は星治より少ないの。そして、あなたは星治よりも遥かに多い魔力を持ってる。本来管理していた人より少ない魔力の人が管理したら、対応できなくなってしまう。だから、あなたに早く管理者になって貰わなきゃいけないの」
「……だけど」
「不安なのは判るわ。だから、数日以内にしたの。心構え、しておいて」
「…判ったよ」

* * * * * * * *

 葬儀が終わって、火葬場に運ばれる事になった。火葬場には或河家と俐咋だけが行くことになっていて、車に星治の棺が収められると、車に乗り込んだ。

「ごめんなさいね、俐咋まで呼んで」
「いえ、別にかまいません。星治さんには、とてもお世話になりましたし」
「…そう、ね。でも私があなたを連れてきた理由は別にあるのよ。そこにいる冬哉の問題」
「え…冬哉、ですか?」

 唯に指摘されて、う、と冬哉が一瞬うめいた。

「今、冬哉は本来の力を全て持ってる状態なの。あの人が解放したから。でもそれは不安定だし、その力に対して恐怖が強いと思うから、一緒にいてあげて」
「え……」
「ちょ…っ、母さん…!」
「好きな子には隣にいてほしいでしょ。それぐらいはっきり言いなさい。というわけだから、一度家に寄って降ろすから、2人とも」

 有無を言わさずに家で降ろされて、唯と別れる。夜には帰ってくる、と一言残して、唯は火葬場へ向かってしまったのだった。

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2010/03/15,18

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