*04 創造主/前編*

 魔法使いによって構成される世界、第1セクター。ここは最もゼフィアに近い種族といわれる。彼らは他のデスマスターが使役する武器、鎌を本来の形として使用することが出来る。鎌は仮初の姿であって、それぞれ別の姿を持つものである。その仮初の姿を解くことができるということは、強い力を持っているということなのだ。だからこそ、ゼフィア一族に近いとされている。

 この世界の中心に位置する教会に、5人のデスマスターが集結していた。1セクターと2セクター以下が切り離されようとしているそんなときに、何もしないわけにはいかないと思ったマスターズが動き出したのだ。

「…しかし、何故2セクター以下が分離されねばならん?」

 ぐっ、と腕に力を込め、1セクター・アリュートの守護者であるローレンツァが言葉を漏らした。その言葉に、そんなことを知っているとでもと返したのはセロンを守護しているリアナだった。
 ローレンツァはリアナに聞いたわけではないらしく、むすっとした顔でラズに聞いたと言う。彼にラズ、と呼ばれた本人―――女性ははふ、と顔を上げて、私には判りかねると返した。ラズと言われた女性は本名、ラズアール・エフェロン。エーヴェンを守護するデスマスターである。

 微かにリアナが舌打ちをしたような気がする―――が、敢えて何も言わないでおいた。彼女の口の悪さや態度の悪さは今に始まったことじゃない。デスマスターとなった当初、否、それ以前からこうなのだから。

「…ゼフィアの長には連絡取ったのか?」

 不意にディエタの守護者、イドハのその声が聞こえて、ローレンツァは頷く。確かに応援要請はした。

「上でもメイドたちが奮闘中だそうだ。使者総統のメイラ殿からの連絡が先ほどあってな、1人使者が来るそうだ」
「使者が?」

 声を漏らしたのはこの1セクターマスターズで最も若い、ヤース。

「あぁ、使者が来るらしい。その使者は途轍もない力があるそうだが…詳しいことは知らん」

 そのときのメイラの声が心なしか呆れていたように聞こえた。もしかすると、メイラと最も関わりのある使者…若しくは使者よりも強い者かもしれない。

「…引止めご苦労」

 突然声が聞こえて、辺りを見回す。もちろん、そこには誰の姿もない。そうマスターズの誰もが不思議に思ったと同時、空間に亀裂が生じた。
 その亀裂から現れた姿は、まるでゼフィアの長にそっくりだった。 だが、彼は違った。

「いや、俺はアルトじゃないんだけど」
「…ぱっと見アルトそっくりだったんだが…」

 イドハが驚きを隠せきれない顔で、突然現れたその者に言った。確かに彼の姿は一見してアルト・ゼフィアそのものなのだ。

「そりゃ仕方ないさ。アルトは遺伝子的には半分、俺の遺伝子を持ってるんだから」
「な…!?」
「それってつまりは…」

 そこまで話が進んでローレンツァは気付いた。何処かで見た覚えがあるこの人物。この人物は―――。

「…創造主…!」

 ローレンツァの言葉にその場が一瞬にして冷める。彼の顔は青ざめたまま、硬直していた。

「それってつまり…初代ゼフィアの長、って…こと…?」

 リアナの声が震えた。珍しい、誰もがそう―――思うはずだったが、今の状況でそこまで考えてはいられなかった。

「ご名答…と言ってやりたいが、俺はゼフィアの姓は持たない。もとよりこの世界にゼフィアなんて一族は存在しない」
「…どういうことだ…!?」
「―――お喋りが過ぎたか。今から繋ぐから退け」

 そう言って、『創造主』といわれた者は円陣の中心へ足を踏み出した。同時、バチリと『創造主』の手から電気が発せられる。その電光から発せられている力に、恐ろしさの余りデスマスターが後退した。それはこの世の存在なのかというぐらい、強かったのだ。

「あ、やばい」

 ぽつり、と漏れた言葉に誰もが皆、疑問符を浮かべる。なにがやばいのだろう。創造主の力を持ってしても、対処できない事態が発生しているのだろうか。

「加減できねぇ」
「はー!?」

 直後小爆発が起きた。

* * * * * * * *

「…これが創造主と思いたくない」
「同感」

 小爆発により教会の床が一部陥没。なんてことをしてくれるんだ、と心の中で誰もが呟いた。

「あーすまん、さっき戻ってきたばっかりでこっちと感覚が違うもんであの出力だとあっちじゃ普通なんだが…。んー…かといって引き上げるとデスマスターの能力が全く使えなくなりそうだし…。まぁ、直すから待て」

 一気に口走ったことが理解できず、そこにいた誰もが聞き返そうとしたが、直すから待て、という言葉に素直に待つことにする。ヴン、と時空が揺れて『創造主』の目の前にはいくつもの3Dディスプレイ。確か使者総統のメイラもこんなことをしていた記憶がある。

「…メインルーム、応答できるか?」
『…できるわよ。何したの』

 創造主が繋げた先から聞こえた声に、創造主が全ての動作を一度止めて嫌そうな顔をした。

「…うわー…ほかの誰かが出てほしかったなー」
『仕方ないでしょ、人手不足なんだから。で、何したの?』
「教会の床陥没させちまった」
『…あんたが陥没すれば良いのに』
「心にもない事いわないでください」

 『創造主』が短く溜息を吐き出すと同時、その声の主も溜息を吐き出した。

『その空間押さえて』
「了解」

 短く返事をすると、『創造主』は陥没させた部分に膜を張った。

「…押えた」
『3秒で直すわ』

 その言葉が聞こえて、リアナが数えてみる。1、2…、3。そう数え終わったと同時にその陥没した床は直っていた。
 直った床を見て感嘆していると、『あなた1人でもそれぐらい直せるでしょう!?』と、創造主が大声で怒鳴られていた。

「今加減できないからやったら変なこと出来そうで」
『…判ったわよ…。早く帰ってきたら? 上で大変なことが起きてる』
「…ん、なんとなく想像つくな。じゃ、また後で」

 苦笑いで後でと言うと、ヴン、とまた時空が揺れ、3Dディスプレイが消えた。

「どうにか繋いではおいたが、また動かされる可能性がある。その時はメイラに連絡してくれ」
「…了解、した」
「じゃーなー」

 そういい残して、突風とともに消え去った『創造主』。本当にあれが『創造主』だと信じたくはない。

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2007/05/16
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