願いを込めたそれは、特別な

 その願いを口にすることは、決して無い。

 その時そこに自分がいなければ、
 その時そこに彼女がいなければ、
 むしろ、お互いに出会うことが無ければ、
 なんて、全て仮想。
 自分がそこにいたことも、
 彼女がいたのことも、
 2人が出会ったことも、
 全て、紛れも無い事実。
 それでも、聴かなければ良かった、と思ってしまうのは、そこで起こった事実を認めたくないから。
 自分が、心の底から惹かれている存在が、口にしたのは。
 忘れようも無い、彼女が元いた場所に置いてきた人間の名前で。
 それを彼女に言ったら、そんなもの寝言だと笑われるだろうか。
 いっそその方が、夢を見ていられる。
 彼女がここにいるのは、自分がいるからだと。
 本当は彼に会いたい、なんて感情は皆無だと。

 そんな風に切羽詰ってしまうのは、届かないから。
 伸ばした手が、彼女に届くことはまず、無い。
 否、伸ばしてはいけない。
 届いてはいけない。
 全てが彼女を苦しめる。
 でも、だからこそ。

――トドカナイカラ、コワシタクナル。

 壊れた感情は、いつ暴走してしまうのか、自分にも分からない。
 だから、ただ切に、願う。
 願うくらい、許してくれないだろうか。

――お願いだから。
――お願い、だから。

 その瞳に映るのは、俺だけでいいから。
 その唇から紡がれる名は、俺だけでいいから。
 
――だから、どうか、俺だけを。


鳴葉ゆらゆさんから戴きまくってる自分です。
戴いて読む度ににやにやします。画面越しでいつもにやにやしてます←危険
今回のは「夢の中まで」のアルト版。アル→イザなんだそうです。アルトが溺れて、壊れてきたらこうなるのかな、と。でもやっぱりイーザはマコちゃんが心配で仕方がないのです。そこらへんで微妙にすれ違っていそうな二人に萌え(落ち着け