願いを込めたそれは、特別な

 先月の今日、私はアルト・ゼフィアという名の変態に、食べられた。
 どんなに泣こうが、喚こうが、その変態は真っ黒い微笑を浮かべ、
「痛くしないから」
 そう言って、食べたのである。
 痛かったよ、馬鹿!

「イーザ?」
「イーザ」
「イーザってば」
 きっとこれは試されている。 私は手は使わないものの、その変態が紡ぎ出す言葉を流した。 右耳から左耳に、私は何も聞いてない。
「イーザー」
 きっとこれは試されている。
「キスしていい?」
「返事が無いってことは、肯定だよな」
「イー」
 きっとこれは試されている。
 けれども、鉄槌を下してはいけない、などという理不尽なルールなんて無いはずだ。
「うるさい」
 私は、その変態を殴り飛ばした。いや、実際デスマスター1人がそんな吹っ飛ぶことは無いけれど。ゼフィアだし。そこは気分の問題。私は変態を殴り飛ばした。
「いきなりそれはないだろー」
 その変態は、反省など皆無のごとく、唇を尖らせる。
「うるさいって言ってるの」
「だって、イーザが」
「仕事放ってまでしなきゃいけないのって、どんな用事?」
 にっこりと微笑む。微笑が黒いことは確かだ。
「お返しを、と思って」
「何の?」
 とうとう来たか、と思う。やはり私は試されているのかもしれない。
「ホワイトデー。先月俺にくれただろ?イ」
 その続きはまた殴ることで押し留まる。
 変態は涙目になりながらも、そこを動かない。諦める気は毛頭無いということか。
「もしくは、俺があげっ」
「いらないし、あげるつもりもないわ。ていうか、しつこい。そういう男は、嫌われるわよ」
「別にイーザに嫌われないならそれで」
「私も、嫌いだから」
 はっきりばっさり言い切る。ここは、躊躇った方が負け。
 変態はというと、むっつりと黙り込んだまま、微動だにしない。
「じゃ、仕事頑張って?」
「……だって」
 変態は最後の抵抗を試みたようだ。
「はい?」
「イーザだって、気持ちいいって言ってたのに、なん」
 変態の言葉の先は、きっと私の黒オーラに消されたことだろう。
 雉も鳴かずば打たれまい。
「水に沈めるのと、土に埋まるの、どっちがいい?」
 本気になったら、変態の方が強いとか、そんなのは、一対一での話。
「案外水の中でも生きてそうね」
「土に首から下を埋めた方が笑える気がしないか」
「なっ、なんでそこで父さんと母さんが……っ」
 今日は、三対一だから、ね。
「覚悟はいいわね、この変態っ!」

 たまには強気に生きましょう。


お世話になりまくってる鳴葉ゆらゆさんからアルイザ。ホワイトデーネタです。「ミュ●ツーの逆襲」ばりのタイトルです。ロゴも似せてみました(笑 あ、句点忘れた!
両親が出て来たら、アルトに勝ち目はないです(笑) なんかにょきっといきなり出てきそう、アルトの両親。
デフォルメ絵で「イーザー、イーザってばー」ってやってるアルトがイーザの周りを駆け回ってそうなイメージが浮かびました(笑